星に願いを ーSEEDー

□Phase-00 星に願いを。
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ある一人の少年が居た。

彼は、人の叶わぬ夢の為に生み出された命だ。
彼自身、その夢を叶えたいなどとは思っていなかった筈なのに。
その生まれは不幸としか言いようがなかった。
それでも、彼は本当の父と母から離され、幸せな人生を歩んでいる。


あるたった二人きりの双子が居た。

彼と彼女は、人の夢の為に作られた少年の『失敗作』だった。

彼はオリジナルの存在を知ったとき、オリジナルを妬み、憎んだ。
彼女はオリジナルの存在を知ったとき、オリジナルを羨み、興味を抱いた。

彼は地球連合軍から軍事会社に所属し、MSパイロットとしてオリジナルを越えようとした。
彼女は『研究所』を脱走し、プラントに渡りMSを操る軍人となった。

運命を違えた双子だが、二人は互いを信じていた。
二人きりの双子だから、また会えると。


ある一人の少女が居た。

彼女は逃げ出した双子の片割れと、『全き同じモノ』だった。

彼がその存在を知ることもなかったし、彼女が彼に出会うことはなかった。

『研究所』で日々、実験と称した非人道的行為を、その体に受け入れ続けていた。

彼女は『双子の片割れ』の存在に恐怖し、廃棄されることを恐れた。

だからどんなに痛くても、どんなに悲しくても、どんなに辛くても。

彼女が涙を見せるこてはなかった。

新型兵器のテストパイロットとなった今でも、それは変わらない。


ある一人の男が居た。

愚かにも、その男は己の死すら金で買えると信じて疑わなかった。

その男が生み出した『己自身』は、不幸にも双子と同じく『失敗作』だった。
男は『失敗作』を拒絶し、『失敗作』は男を殺した。
やがて、成長した『失敗作』は世界を憎むようになり、戦争を拡大させつつあった。


人の夢、人の業。
決して敵うはずのない、『自然の摂理』から離れていく人間たち。

コーディネーターこそ、新たな種とするプラント。
ナチュラルこそ、本来の人間の形であるとし、コーディネーターを疎む地球。

両者の間に立つ担い手は居るのだろうか。

戦火に塗れた人々は、ただ。


救いを欲して、叶わぬ願いを星に托す。



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