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□おれのもの
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「次、15番から20番!位置について…よーい、」
勢いよくピストルの音が弾け、それと同時に走りだす。
ゴールの奥の通り道に微かに3年生の姿が見えた。
勿論跡部さんの姿も。
ゴールの後、俺の記録を見て周りの奴が騒がしくなった。
その声が聞こえたのか、3年生がチラホラと校庭に入ってくる。
「何騒いでんの、1年生?」
芥川さんが楽しそうに話に混ざった。
それはもう、ナチュラルに。
「日吉君のタイム、クラスで1番何ですよ!さっすが、テニス部ですよね!2年生でレギュラーなだけありますよ。」
「芥川先輩も速いんですか?」
「えー、俺そんなに速くないC〜」
なんで、そんな違和感なく馴染んでいるんだこの人は。
なんだか記録を聞きに行くのも面倒くさくなってスタート地点に戻ろうとした。
そしたら急に後ろ…芥川さん達が騒いでいたところがさらに賑やかになった。
だいたい予想は付く。
だってこんだけの歓声を独り占めする人はあの人しかいない。
「おい、日吉!!いくら授業の体育測定だからって、手抜きすぎだろっ!!」
いや、それいう前にその歓声をどうにかして頂けると物凄く有り難いです。
「確かに…少しは手を抜きましたけど…遅くなったってたかが0.26ですよ?」
呆れ加減で言うと跡部さんは俺の体操服に眼を向けた。
それはそれは不思議そうな顔をして。
「体操服、どうしたんだよ。」
「忘れたから、借りたんですよ。鳳はいなかったんで、他の奴に。」
なんだろう…周りが凍り付いたくらい寒い空気が周りに流れる。
この空気は俺が出しているものではない。
出しているのは………跡部さんだ。
何故だか嫌な予感がする。
恐る恐る跡部さんと眼を合わせると……嫌な予感しかしない眼に変わっていた。
思わず本気でスタート地点に行こうとしたら忍足さんに捕まった。
「自分あのキングをどうにかしたらな、周りがえらい迷惑喰うで?な!」
そんなの嫌に決まってる。
こういう時の嫌な予感は百発百中なんだ。
しかも自分達の身の危険を感じて俺を跡部さんに差し出すなんて忍足さんも悪魔だ。
「先生、少し日吉をお借りします。公欠にでもしておいてください。」
跡部さんはさっさと先生から許可をもらうと俺を抱え上げた。
いわゆる、お姫様抱っこ。
周りの女子の叫び声がグランドいっぱいに響いた。
「降ろして、ください。跡部さんっ!!ちょっと…アンタ、ばっ…かですか?」
暴れたら暴れた分だけ跡部さんは首に擦り寄ってくる。
挙げ句には
「ひぁっ!!」
舐めやがった、人前で。
恥ずかしさで顔が上がらない。
跡部さんの肩にしがみついて俯く。
多分、跡部さんの計算通りになっているんだろう。
俺はそのあと何処かへ連れていかれた。
勿論しがみついて俯いていたから何処に行ったかなんて知らない。
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