二次小説
□コウジツ
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きっと、二人とも素直じゃないから。
「幾松殿、蕎麦を一つ頼む。」
「あら。今日は一人?エリザベスちゃんは?」
いつも二人(一人+一匹?)で来るのにめずらしく今日は桂さん一人だった。
「エリザベスは急用らしい。」
「そうなの。」
しばしの沈黙。
でも、その時間が心地よく感じるのはなぜだろう。
「はい、どうぞ。」
「うむ。では、いただく。」
おいしいそうに蕎麦を食べるもんだから、また作ってあげようと思ってしまう。
「幾松殿。」
「ん?なに?」
「じっと見つめられると、食べにくいのであるが…俺の顔に何かついているのか?」
「おいしいそうに食べるから。見てただけ。」
「え?」
はぁ。
恥ずかしいこと言わせないでよ。
「なんでもないわよ。」
「そうか。」
「では、幾松殿。ご馳走になった。」
「うん。」
あっという間の時間。
もうちょっといればいいのにと思っている自分にびっくりする。
「幾松殿。」
またそうやって、優しく呼ぶから。
“もう少し”と思ってしまう。
でも。
「また、来てもいいだろうか。蕎麦を食べに。」
そんなこと言うから。
「うん。」
期待してしまう。
「またおいで。」
コウジツ
今度は口実なしで、ね。