**短 篇 集**

□*…こんにちわ赤ちゃん…*
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『ぃッ…いやぁぁあああッ!!』

奇声混じりの叫び声を上げるフレイ

「フレイ…大丈夫?」

腰をさすりながら、心配そうに相手の表情を伺うキラ

『ダメ。最悪。変わって。』

怠そうに不機嫌な表情の彼女は無理難題を彼に投げ掛ける

「……ははは…」

もう笑うしかない
それが、彼女を余計に苛立たせた











…こんにちわ 赤チャン…












ピンクと白でまとまった落ち着いた雰囲気の病室には、深紅の長い髪を振り乱し、冷や汗を額に浮かべ眉間に皺を寄せた彼女が苦痛に悶えていた
時折、両隣の病室からも、悶絶する叫びが聞こえる
まさに戦場
女たちの戦いだ


「フレイ…なんか飲む?」

その戦場に場違いに存在する男子
彼にとっても初めての経験であり、様々な戦火を潜り抜けた彼であっても未知の体験だ

『喧嘩売ってるの…?』

ゼェゼェと肩で息をする彼女は…
まさに般若の形相だった…
正直怖い

「…ナンデモナイデス…」

『もっと強く…叩くくらいに擦って!!』

「ハイ」

『なんで片言なのよ…ッ…んんん…だぁぁあああ!!』

「や…フレイ!?大丈夫?」

『だぁ…かぁらぁぁああ…んぎゃぁぁあああ!!!!!!!』

「!!!!!!!」

《ぎゃあって…本当に叫ぶ人居るんだ…》

彼女が必死に悶える中、涼しい表情の看護師さんが病室の扉を開け軽く挨拶し、彼女の容態を見る

『そんな力んじゃダメよ?どーれ…そろそろかな?』

そろそろ…その言葉に、彼女も彼も安堵と不安の交じる変な表情になる

『じゃあ…部屋移るから…自分で歩いてくるのよ?あっ…旦那さん?立ち合う?』

唐突な質問に、彼は吃り、言葉に詰まると、自分の意志を伝えるより早く彼女が割って出た

「立ち合いま『要りません!!立ち合いなんて!!』

《…僕は…立ち合ってみたかったんだけど…》

彼女の言葉に遮られ、自己主張をする機会を失い固まる僕と、複雑な表情で笑みを浮かべる看護師さん

『じゃあ…準備が出来たら、分娩室へ来てね?』

そう行って、看護師さんは部屋を後にした




そう…彼女は今から戦場へ出掛ける
女たちの戦い


出産
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