**短 篇 集**

□*…こんにちわ赤ちゃん…*
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彼は、天使が生まれてからと云うもの、仕事を休み、毎日産院へと通った
もちろん、彼の友人や彼女の友人達も、忙しい合間を見ては、祝いに駆け付けてくれた





初めての育児
初めての三人暮し
初めての…





嫉妬

仕事を定時に終え急いで帰ってくる彼は、毎日毎日育児に家事にと献身的に、貢献するものの彼女の態度は、以前に増し冷たくなった
と言うか…冷たくは無いが、優先順位が変わり、彼が寂しくなった

「ねぇフレイ、その…」

『はぁい…お風呂入りましょうね?』


「フレイ…?」

『あ…キラ?』

「えっ…?はい?」

『準備よろしくね?』

「はい…」

だから寂しい
彼が話し掛けようとしても、彼女の視線は天使に向けられ、話し声は上の空
むしろ聞いてない
だから寂しい


でも、それに怒ることも嘆く事も、ましてや八つ当たりなんて出来ない
したら殺されるだろう…

《僕もしたくないし…》

だからこそ、空回る彼の気持ちに気付く事無く、彼女は、天使との入浴を楽しんでいた
呼ばれたので、満面の笑みを浮かべ浴室に向かえば

『何笑ってるのよ?はい、よろしくね♪』

天使を預けられ、浴室の扉は、彼女の笑顔と共に閉じられた


『ん…んッ…』

フカフカの真っ白なタオルに包まれた天使は、複雑な表現を浮かべていた
彼は、自分を父と認識していないのか?と不安になっていると、天使は気持ち良さそうに悦っした表情を浮かべた…
彼は、腹部に感じる生暖かい感覚に躊躇いながら、天使を少し自分から離す
彼の腹部から下半身にかけて、大きな地図が出来上がっていた


「う…うわぁぁあああッ!?」

彼の叫び声に、ビクッと驚き肩を竦めた天使の表情がみるみる険しく変化する

『ぴッ…ぁゎッ…ああぁぁぁ!!』

天使も大声で泣き始めた

『もうッ!!!』

バスルームから、タオル一枚を体に巻き付けた彼女が、剣幕酷くやってくると、彼から天使を奪い馴れた手付きであやし、泣き止ませると手際良く着替えさせミルクを飲ませ、天使は安らかな寝息をたて始めた

『キラ…何してるの?』

彼女の様子をただ見続けるしか出来なかった彼は、淋しそうにたたずんでいた
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