Novelette

□赤ずきんにご注意
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 むかしむかし、ある森の奥で若者が住んでいました。
若者は、森に生えている薬草や香草を摘んでは、それを街で売って生計を立てています。
今日も、いつもの様に森へ薬草摘みに行く準備をしていました。
若者の名前は、レアンと言って細身の体格に優美な顔立ちなので、性別が男でなかったら玉の輿に乗れると、評判の美人であった。

「そう言えば、最近は山賊が出ていると街の人たちが、噂してましたね」

 独り言を呟き、護身の為に゙色々゙と準備を整えて、お気に入りのフード付きの赤色の外套を纏うと、鼻歌を口ずさみながら森へと入って行く。


 街へ通じる一番の近い道は森にあるのだが、この森へ最近になって山賊が、見かけるようになったのだ。
それは、街でも噂となりここを通る者は、神へ祈りつつ足早に抜けようとする。

「どうか。神様、出ませんように」

 と、呟きながら歩くのは隣町からやってきた行商人であった。
ここ以外にも、街への道はあるものの費用がかさむ上に、倍時間がかかってしまう。
だから、祈りながら進むしかなかった。
が、運の悪い事に行商の前へ、その山賊が姿を現す。

「おい! ちょっと待ちな」

 頭上から声が飛んできて、行商は身を竦め足を止めた。
すると、スチャッと樹木の上から影が降り立つ。
筋骨逞しい大柄の体格で、精悍そうな顔立ちで背中には剣を背負う。

「ここは、牙狼、ロディア様の管轄だ。ここを通りたかったら通行料をもらうか」

 ニヤニヤと笑い、行商を脅す。

「い……命ばかりは」
「だったら、有り金と背負っている品を出しな!」

 そう言って、背中の剣をキラリと引き抜く。
青ざめた表情を浮かべ、行商は一にも二もロディアの言葉に従い、有り金も荷物も置くや一目散に逃げて行った。

「はっ、笑えるな」

 鼻で笑って、有り金と荷物を持ちねぐらにしている、古ぼけた小屋へ運んでしまうと、次なる獲物を求めて後にする。
そうした二人が、バッタリと出会うのは必然というもの。

(お、新しい獲物だ)

 赤色の外套を纏い手提げ籠を持ち歩いているレアンを、ロディアが先に見つけたのだ。
レアンへ見つからない様にして、物陰に身を潜めながらついて行く。
一方のレアンは、ロディアの存在を気づいていない様子で、森の奥へ進んで行く。
人気のない森、女っ気のない生活、その上でレアンが男ながら美人とあって、ロディアはムラムラとしたものを抱き始める。

(へへっ。ご無沙汰だしよ。男だが、この際は贅沢も言ってられない)

 と、腹が決まってサッとレアンの行き道を先回りし、前方から姿を現したのだ。
茂みから飛び出す様にして現れたロディアを、レアンは驚き見つめる。

「何ですか。貴方は?」
「ここは、俺の管轄の森なんだ。命が欲しくば大人しく言う事を聞くんだな」

 お決まりの脅し文句を言った。


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