§別館書庫§
□『新訳 愛しさとアイツは空の彼方』
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高杉への想いに決着をつけたあの日から数ヶ月。
季節は冬を向かえ、江戸の街並みが白く染まるほどの寒気に見まわれていた。
「珍しいですねィ、江戸に雪が積もるなんて」
「あぁ…」
「胸騒ぎしかしねーや」
総悟と二人、イルミネーションが眩しい商店街を巡回している。
カップルだらけで、いつもとは雰囲気の違う街の空気。
"こんな日に土方さんと仕事なんて…俺たち浮いてますぜ。周りに合わせて手でも繋ぎましょーよー"
そんなことを言いながら差し出す総悟の手を、
「阿呆か」
と一言あしらって、その手をパチンと払った。
つまらなそうな顔する総悟の前を一歩先に歩いていると、後方から名前を呼ばれた。
「副長ぉおおおーッ!!」
「どうした?何かあったか?」
血相変えて全力疾走してくる山崎に、足を止めて煙草を咥える。
荒い呼吸を整えながら、山崎は口を開いた。