§別館書庫§
□美しいモノ程、儚く壊れやすい-愛故に…-
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―――。
身請けの話をトシに告げ、嬉泣きであろう。泣きつかれて眠ってしまったトシを私室の布団に寝かせて、気分転換する為、浴場へと向かった。
トシの涙で濡れた着物を脱ぎ、浴場に入ると、黄金色の長髪が湯煙の中に見えた。
その男は、こちらを振り向いて口を開いた。
「晋…殿」
あからさまに不機嫌そうな顔。
人間じゃないモノを見るような奴の眼。
俺が嫌いで仕方ねーんだろ、総悟。
俺だってテメェが嫌いだ。
だが…全てはトシの為だ。
「そうあからさまに嫌な顔すんなよ。テメェには話しておきたいことがあるんでな」
「身請けの話でしょう?知ってまさァ」
湯船につかり、口を開いた晋に対して、総悟は晋に背を向けて口を開いた。
「それもあるけどな…」
そう言った晋だが、長い沈黙になる。
その沈黙に耐えられなくなった総悟は、大きなため息と共に晋の方に振り向き、罵倒の一つでも浴びせてやろうとして、息を呑んだ。
(な、泣いてる…)
細い晋の瞳から伝う涙。
その涙を拭いながら、晋が口を開いた。