ぶっく
□ビーーッ
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「やあ、いらっしゃい。」
「お、おじゃましますっ!」
久方ぶりの訪問に、笑顔の家主と我が主人。家主――マツバは主人が靴を揃えて立ち上がると同時にさりげなく手を出す。エスコートのつもりだろうか。イッシュに多いという"ふぇみにすと"気取りか、ふん!ばしん。
「こらゲンガー、叩いちゃダメでしょ!」
「はは、いいんだよ。大丈夫。」
払い除けた手をもう一方で握り、笑顔を微塵も崩さずこちらを見やるマツバ。何だ、俺の事など微塵も気にしていないと言うその余裕な態度は。本当にこいつ腹立つな!ああもう、ちょこちょこ後ろをついてくる主人に破顔するな!ああもう、ああもう!!
「寒かったでしょ?おこた、あったまってるよ。」
「やったあ!」
茶の間の障子を開くと飛び出す紫黒色の影。
「ひゃ!」
「ゲゲゲゲゲッ!」
久しぶり!なんて挨拶で飛び出したマツバのゲンガーが主人に飛び付いた。ポケモンは飼い主に似る、とはまさにこのこと…そうはさせるか!渾身のたいあたりをお見舞いしてやる!
「ゲンガッ!!」
「ゲン!?」
何すんだとはこちらの台詞。さあ表に出ろ!
「マツバさんちから出ちゃだめだよー!」
「ゲンッ!」
主人の言葉にわかっていると返事をして、開け放たれた縁側から飛び出した。