第01章

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あーたらしーいあっさがきたー、
きーぼーおのあさーが
──そーれいっちにぃさん!

流れた歌は"ラジオ体操"。と言っても、もう
歌は終わっている。静かになる部屋。そして
ガンツには文字が浮かび上がる。みんな何も
喋らないところを見ると浮かんだ文字を黙読
しているのだろう。変に静かな部屋に、僅に
カチカチという音が聞こえてくる。そうして
また文字が浮かび上がる。時々"り"と"す"が
逆の文字が見られる。不思議な文字は消え、
今度は顔写真のようなものが映し出される。
ネギのような頭をしたその姿は奇妙なもので
顔が見事に歪んでいた。
顔写真が現れたと同時にガシャンと音を立て
ガンツの三方向が開く。恐れを成しながらも
ガンツに近付く人。ガンツの中を覗き込み、
小さくうわ、と悲鳴を上げる人も居た。横に
いた男の人は、人差し指をガンツの中にいた
人に近付け、ぴと、と触れてみる。それは、
まだ生暖かさが残っていた。ふとケイチャン
と呼ばれていた人がガンツの裏側へと回り、
腰を屈めて中を覗き込む。そこには、名前が
記載されたアタッシュケースがあり、彼は、自分の物を手に取り口を開く。

「……名前、入ってる。」
「ホントだ。」

一通り全てのアタッシュケースを床に置く。
残るは、かとう、きしもと。この二つだけ。
かとうと思われる前髪を上げた人がきしもと
と記載されたアタッシュケースを見て加藤は
岸本、さん?と尋ねた。岸本と呼ばれた人は
戸惑い気味に頷いた。

「これ、着れるんじゃないですか?」
「あの……わたし、死んでないんでしょうか
……」

岸本は加藤をまっすぐに見つめながら尋ねる
も加藤はわからないと言い、岸本にスーツを
渡した。



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