第01章

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「あの……ズルしたくないんで説明します
けど、これ、テレビ番組です。みなさんは
催眠状態で参加してます。」
『私、櫟原!櫟原神楽!こっちの子は西くん。
西くんのお父さんがプロデューサーなの。』

気が付けば外。
西と櫟原と名乗った二人はえんやこらと嘘を
彼ら参加者に説明する。催眠状態で参加して
いる、なーんて言葉を信じる眼鏡の男の人。
死んでない、死んでないと煩い。事実を受け
入れられないようじゃ、ここではきっと生き
残れない。死亡決定。ふと、櫟原はぐるりと
辺りを見回しくろのと記載されたアタッシュ
ケースを持った男性で目を止めた。

「……リアリティーショーって知ってます?
"ATO"のバーチャル版みたいな。」

尚も西は説明を続ける。だけど、いい加減に
彼の嘘に飽きた櫟原は、アタッシュケースを
持ち、遠くの方を見つめている、"くろの"。
その先には小さな影がある。

『くろの君。何、見てんの?』
「え、あ……いや……」
『もしかして、あの小さいの?』

遠くの方から一千万だの何だの聞こえるけど
勿論信じない。信じたって一千万貰えるわけ
じゃないし、もしかしたら死ぬかもしれない
んだから。だけど馬鹿正直に話を信じた人が
遠くに見える小さいのを追いかけて行った。

『……くろの君と、加藤君は行かないの?』
「いや、あれ……子どもだろ。」
「気になるんなら、自分で確かめれば?」

そう言って、西君は走り去って行った。


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