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□愛情の裏返しの裏返し
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正座、である。
in廊下。
その上食堂移動時間なので人通りは通常3倍。
そんななかの正座、である。

「で、森崎要クン。」

そんな状況の中、森崎、っていうか俺の目の前で竹刀片手に仁王立ちしていた奏が言った。
一応言っておくが日常的にコイツが俺のことをフルネームクン付けで呼んでるわけじゃないことを覚えておいてほしい。奏が俺のことをフルネームクン付けで呼ぶときは、基本的に、ご立腹の時、だけだから。

「今日のお料理対決?っていうか、恥さらし?は、いったい何だったのか、私に教えてほしいな☆」

ニッコリと、口を歪めながら言う。
間違っても笑っているんじゃない。歪めているだけ。
料理対決っていうと、たぶん、ていうか十割守屋っていうぽっと出の奴とやったアレのことだろう。
…俺的には、そこは触れてほしくないところなんだけど。

言えるわけないよな!

「先生たちの目の前で意気揚々に出しゃばってみてあのサマとか、汚名挽回名誉返上以外の何物でもないじゃない。
その上守屋クン?を舐めてたかどうかは知らないけど馬鹿にした上に塩を送るかの如くだし。
第一なんで料理人がパフォーマンスに走ってんのよだったらどっかのサーカスかなんかに頼み込んで参加してくればいいんじゃないの?ジャガイモの皮一発剥きってそんな技術磨いてる暇があったら味と質に拘ったもの作りなさいよ」

最初の一言を皮切りにしてくどくどくどくど説教タイムが始まった。
昔からのお決まりなんでこういう仕打ちにはもう慣れた。いや慣れちゃダメなんだけど。
まぁ奏の言うことは基本的に間違っちゃいないので、黙って聞いているしかない。

そんな感じでお説教タイムは昼休み終了まで続いたわけだが。

「あ。もう昼休みおしまい?」

無事奏の気もすんだようなので。

「まだ2割も話してないのに…」

すんでなかったけど。
ともかく終了の目途がたった。

「じゃあ要はもう教室戻っていいや。」

呼び方も元に戻った奏は、しっしと手で払うようにして俺を追い払う仕草をする。
そのままなぜだか教室と反対方向に歩いていく。
いや、理由は分かってるんだけど。

「オイ、奏。」

「ん?なに。」

くるりと顔だけで振り向く奏。最後まで言わない気らしい。
…変なところだけ強情で、そんでアホだよなぁ、コイツ。

「職員室に行くなら俺も行く。
っていうか、俺が行くから。」

もともと今回のは俺が原因だから、お前が行く必要ないだろ。
言うと、

「何言ってんの。要の責任は私の責任でしょ。」

奏はにやりと笑ってから

「…じゃ、一緒に謝りに行こうか。」

またクルリと前を向いて歩きだした。

素直じゃねぇやつ。

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以心伝心!みたいな


 

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