なんてことはない平日の放課後。時間が出来たから学校の周りをフラフラと歩く。 帰宅部はこういう時の時間を潰すのがある種の活動内容なんじゃないかと思う。 「やぁ、結衣。」 さて、そんな私の活動を事もなげに邪魔に入ってくるのは、 「…時人。」 ついこの間野球部に無事入部してきたらしい元部員の時人だった。 髪をいつもより高く上げていてなんとなく新鮮に感じる。 それでも相変わらずの漂漂とした態度に、なんとなく懐かしさを覚えたり、はしてないが。 「アンタ、部活じゃないの?」 なんでこんな学校外をふらふらしてるのよ…。 せっかく部活に入ったのに、とか一言付け加える。 すると、なんてことはないように答える時人。 もう完全に足を止めて話し込む気らしい。 「今は外周。 ちょっと君が目に入ったから声を掛けに来ただけだから、安心していいよ。」 目を細めるようにして笑う時人。 そんなことより。 「外周してるらしき野球部員はアンタが来るかなり前に私の横を通り過ぎたけど。」 進行方向を指さしてみるが、やはり野球部員の姿は見えず。 どんだけ遅れてんのよ…。 「っていうか別に安心とかしてない。」 「心配はしてないけど野球部の動向は一応気にかけてるんだ。」 言いながらまた笑う時人は、完全に人のことをバカにしてるとしか思えないんだけど。 「…うざ。」 「ははは。心外だなぁ。」 なんてのは口だけでまったく気にしてない様子だし。 つくづくつかみどころのない男だ。 「つーか、サボってるってことはなに?やる気ないの?」 「いや別にー。でもマラソンってつまんないじゃん?」 時人が、ね?と同意を求めるように軽く首をかしげる。 聞くなっつーの。 「…じゃあなに? やっぱ楽しくない?」 こんな質問もどうかと思うけど。母親かっての。 でも、まぁ、一番気になるところ。 だったりする。 その質問にはちょっと考えたらしく、少し間。 のち、答え。 「どうかな。 まだわかんない。」 今度は困った時のジェスチャーとして肩をすくめる時人。 まぁ見た感じでは全く困ってなさそうなんだけど。 「…まさか二回目の途中退部…。」 「んー、どうだろう。 でも、ま。無いんじゃないかな。」 思いのほかずいぶん早い回答。 というか、予想してなかったんだけど。 …へー。 「ふーん。そ。」 「なんだ。詳しく聞かないの。」 「興味ないもの。」 「冷たいなー。」 「なんとでも。 つーかいい加減参加してきなさいって。 はい走る走るー。」 「えー。」 無理やり会話を中断させてぽんぽんと時人の背中をたたく。 適当に歩きだした時人。つーか野球部が走ってった方向と逆なんだけど。 あ、そうだ。 「ところでさー、野球部って試合やんの?」 「うん。土曜日。何、来てくれるの?」 「さぁ?」 真似するように私も肩をすくめると、「素直じゃないなぁ」なんて声がしたけど、 ま、気にしないってことで。 #### なんていうか結構気にかけてくれてるってのが分かればいい |