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□家庭教師
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「…十堂先輩もう無理お手上げ。」

グダグダと机の上に突っ伏しながら白旗を振るように手を振る。

「私日本人だから英語読めない」

「地球人だから地球語読めるって大丈夫。」

「先輩それは規模違いだと思う…。」

相変わらず適当にはぐらかされる私。

ただいま武井こと私は卒業済みの十堂先輩に勉強を見てもらっているところです。

もうすぐ美景高の期末テストが始めるんですけど、はっきり言って勉強得意じゃないので、
在学中テスト常に95点以上という驚異的な勉強得意さんの十堂先輩に家庭教師を頼んでいるもらいました。
家庭教師だけど私が先輩の家に押しかけているだけなんだけどね!

「というか何をどうすればあんな高得点を叩きだせるんですか…」

「んん?そうだな。真面目に授業聞いていれば普通に点は取れるんだけど。」

「畜生これだから頭いい奴ってのは…」

なんというか、元の器の違いが如実に表れているみたいだ。
…いや教え方はとても上手なんだけどね。

「でも教えてもらう身としてはとても申し訳ないです…
覚えるの遅いし…
第一卒業したのにこんなことにまで時間割いてもらって…
情けない限りです…」

今までなら学校のテスト期間中ということにかこつけて一緒にやったりできたんだけど。
もうそういうこともしにくくなっちゃって。

これが卒業ってことなんだなぁって、再確認してから、また落ち込む。

「気にしない気にしない。
 それに俺にだって息抜きは必要だしね。」

「うぅ…先輩ありがとうございます。」

「うん。素直でよろしい。」

それじゃあここまでやったらいったん休憩。

そう付け加えてから私の頭をポンポンと撫でる十堂先輩は、やっぱり優しい。

「あ、そうだ。」

突然手を叩いて、嬉しそうに十堂先輩が笑う。

「結衣ちゃん、今度のテストで平均80超えたらご褒美あげようか。」

「え。ご褒美ですか?」

「うん。そうご褒美。そういうのがあった方が結衣ちゃんもモチベーション上がるんじゃないかな。」

にこにこといい笑顔で言う先輩。
んー。なんだろう。普通に嬉しいんだけどなんか嫌な予感が絶えない。

「ん?どうしたの結衣ちゃん。
 あ、もしかしていらない?」

「いやいやいやいやいや!いりますよいります!!
いり…ますけど何なんですかご褒美って。」

「んー。秘密。」

指を口に当てて首をかたむける先輩。

「え。ひ、秘密…。」

「うん。ないしょの方がいいかな。」

いやそういう問題じゃないです先輩。なんてツッコ…めるわけないですよね。

「え…じゃあヒント。ヒントください。」

「えー。」

「えーじゃないです先輩」

それから渋々なのかわからないけど、うーん、と首をひねった。
と、思ったら突然立ち上がる。
なんだろうと思ったところで、

「こういうこと。」

おでこに、
リップ音。

…ん?

「これから飲み物取ってくるけど、紅茶でいいかい結衣ちゃん」

「…あ、はい。ありがとうございます。」

「じゃあ、戻ってくるまでにその問題終わらせときなね。」

「はぁ。」

そのまま颯爽と扉の方へ歩いていく先輩。

今絶対私の顔赤い。


「…。
…頑張ろ。」


なんて、ね。




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