君と僕。

□この感情は
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「要っちって、ゆっきーかゆうたんと付き合ってんの?」

帰り支度を整えた俺は、忘れ物を取りに担任を務めている教室へ向かった。

そして耳にしたのがさっきの言葉だ。
思わず動きが止まってしまう。

半分程開いたドアから教室を覗くと、中には浅羽君をはじめとする仲良し5人組がいた。


「はぁ?
んなわけねーだろ。」

塚原君は顔をしかめ、反論する。

「だってさぁ、」
「だってもくそも有るか。俺はこいつらと付き合うくらいなら、死んだ方がマシだ。」
「えー、要君ひどーい。」
「ホントだよ。僕らはこんなに好きなのに。」

尚も言い募ろうとする千鶴君を遮った塚原君の言葉に、浅羽君達がよよ、と あからさまな嘘泣きをする。

「お前らさっき俺が『好き』って言った時、思いっきり嫌そうな顔したじゃねーか

がたん、と塚原君が勢い良く立ち上がる。
その瞬間、目が合った。

「あ…。」

彼が気まずそうに声を上げる。
それを見て、残りの4人もこちらに気付く。

「あ、せんせー。」

真っ先に声をかけてきたのは千鶴君だった。
教室に入ると、続いて浅羽君(悠太君の方)が。

「先生も帰るところですか。」
「うん。君たちも早く帰りなよ。」

目的の物を教卓の上に見つけ、バックへしまう。
はーい、と彼らが答えるのを見て、その場を立ち去った。





†††††††




帰宅後、ソファーに寝転び教室での出来事を思い出す。
彼のあの一言に、どうしてももやもやを隠せず、眉間に皺が寄る。

一度頭を冷やす為、シャワーを浴びようと立ち上がると、

ピンポーン

タイミングを見計らったように呼び鈴が鳴る。

重い足取りで玄関へ向かいドアを開ける。
そこには、先程まで思いを馳せていた人物が佇んでおり、思わず目を見張る。

「塚原君…。」

その顔は少し不安そうな色を浮かべている。

「どうしたの?
あ、それよりホラ、入って…。」

心中を察せられぬよう、平静を装い、目の前の生徒を中へと招き背中を向けると…

クイッ

軽く後ろに引っ張られる。
首を回し視線をやると、塚原君がシャツの裾を掴んでいた。

「?
…塚原君?」

呼び掛けると、彼は小さく身体を震わせ、泣きそうな顔になる。

「違うから…。」
「え…?」

「あいつらに好きって言ったのは、罰ゲームで、その…本気じゃない、ですから…」

あぁ、

「俺が、好きなのは…先生だけです。」

「…うん、知ってるよ。
でも、これからはどんな事が有っても、僕以外には言わないで欲しいな…。」

そう言って、振り向いて彼を抱きしめる。

「はい…。」



そうか、これが


嫉妬。

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