Plumeria
□斑尾
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初めてあの子を紹介されたとき、子供なのにやけに落ち着いた子なのね、って思ったわ。
「さあユスラ。この人に自己紹介をしなさい」
「はい、ルイスさん。はじめまして。ユスラ・高瀬です」
突然本社にきたものだから驚いたわ。なんたってあの奥さんすらいない私の旧友がいきなり子供を連れてきたのだから。
「あら…。これはいったいどういうことなのかしら、ルイス」
顎に手を当て考え込んだ私などまるで気にしない旧友は、口の端を持ち上げ眼鏡をくいっと人差し指で持ち上げる。いちいち格好をつけられてもねえ…。呆れる私など見えないようで、その子の肩に手を乗せ口を開いた。
「私が個人的に保護しているNEXTだよ」
「そう…。NEXTだったの」
別に驚かないわ。
ゴールド地区の住人ともなれば良く耳にする話よ。少しばかりかお金を持った一般人が、身よりのいない幼いNEXTを保護する。慈善のつもりかはたまたNEXTに個人的な利益を求めているのか…まあ理由は人それぞれでしょうけれど。ともかくココでは良く聞くの。果たしてこの小さな女の子はどんな理由で引き取られたのか。まあ聞いてやる義務もないから聞かないけど。ただこの旧友はいったいなぜ私にこの子を紹介しに着たのかしら。仏頂面が多いからなかなか読めないのよ。んもうイヤあねぇ。…子供が無感情なのは確実にルイスのせいよ。アンタ…。
「アンタ、もうちょっと感情見せなさいよ。子供に悪影響だわ」
思わず口についた言葉。仕方ないじゃない。無表情二人が並ぶとなかなかのもんなのよ。
するとルイスは私の言葉をまるで待っていたかのように含み笑いを見せこの少女の両肩に手を置くと私に差し出すように前に突き出し言い放った。
「そんなことは後に改善する。実は今日は頼みがあってきたんだ」
「アンタがここまできたんならまあ予想はついていたけど。で? もちろん内容にはよるからね」
「いやなに。ただ単にこの子のNEXTとしての教育を君に頼みたくてね。暇なときでいいんだ」
まったく何を言い出すのかと思えばそれ…。
こっちの気も知らないで。
「そりゃあアンタには恩があるし、別に断りはしないけれど…。面倒くそうがり家が珍しいことをするもんね。理由は聞かない方が良いのかしら」
「なぁに。ヒーローアカデミーに才ある子を潰されたくないだけさ」
「ふぅん」
本当にそれだけかしら。
女の子は私たちの間に挟まれて気まずかったのか、それとも力を誉められ気恥ずかしかったのか、そわそわと床に向けた目を泳がす。
…あら可愛い。
「そんな訳で頼むよ!」
と、てんやわんやでルイスは去って行き。
気がつけば夕方。
少女といえば、私個人の仕事部屋の端に置いた小さな椅子に終わるまでの数時間。じっと座っていた。大人しいのかそれとも気が小さいのか。眼の強さを見ればどちらでもなく恐らく『大人びている』だけとわかる。それに事実聞かれたくない話の時は自然と廊下へと出ていた。
賢いのかしらね。まだこんなにも幼いのに。
手にしている本をとっくに読み終えているなんてわかっているのよ。子供らしくないのもどうかしらねぇ。
「ユスラちゃん。そろそろ帰ろうかしらね」
「はい。シーモアさん」
あらヤダ。
他人行儀。
小さな頭をなでてやると、
少女は不思議そうに目を瞬いた。