オリジナル
□俺と君とあの花の名前
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暖かな春の日差しが降りそそぐ中、多くの花が咲く丘で、小さな子どもが2人、走り回っていた。
『れんげちゃん!!待っててば』
『れんげちゃんって呼ぶなってば、ゆう』
『だって可愛いじゃん』
そう言って、黒髪の子は、足を止めた、自分より10センチほど背が低い金髪の子の頭を撫でる。
『うれしくない…』
『照れちゃって、ホントに可愛いな』
『照れてない!!!』
急に恥ずかしくなり、金髪の子は思わずムキになる。
黒髪の子は、そんな金髪の子を包み込むように、抱きしめた。
『もー、れんげちゃん大好き!!』
「俺も!!…え」
黒髪の子の笑顔の告白に返事をした自分の声に驚き、一条 蓮(いちじょう れん)は目が覚めた。
さっきまでいたはずの花畑ではなく、自分の寝室の天井が目に飛び込んできて、蓮は今までのことが夢だったということに気がつく。
「はぁ…またか」
蓮は最近よく見る同じ夢に溜息をつく。
十年以上前に遊んでいたショートで黒髪の女の子の夢。
少しの間だったが、とても仲良くなった思い出だけは残っていた。
(今思うと、初恋だったんだろうな…)
しかし、こうここ毎日同じ夢を見ると、なにか起りそうな気がしてならない。
そんな思いを振り払い、蓮は学校に行く準備を始める。
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