オリジナル
□俺と君とあの花の名前
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私立緑十字学園。
その名の通り、緑が生い茂る全寮制のキリスト教を崇拝する学園。
あの有名なドーム何個分か確認できていないほどの広大な敷地があるこの学園は、
”緑を大切に ”
と生徒手帳の1ページ目に書かれているように、敷地の3/4が緑なので、都市の中に建っていることを忘れてしまいそうになる。
蓮はこの話を聞いた時、
『それはもう森の中にポツンと学園があるんじゃないか?』
と思ったが、あえて口に出さないようにしている。
キリスト教を崇拝していることもあり、校舎も全寮制の寮も煌びやかで豪華な装飾が施されている。
蓮は昔から自然の中で寝転んだりすることが好きで、私立にしては珍しく自由な校風もこの学園の特徴の1つだったため、この学校を選んでいた。
「あー、ダリぃ」
そして今、蓮は校舎とは全く逆方向へ向かって、校庭を歩いていた。
なぜ俺がこんなところを歩いているかって?
その理由は5分前にさかのぼる。
俺は生まれつき天パで、髪の毛は金に近い色だった。それに加えて、目つきが少し悪かったこともあり、昔から周りに馴染めないでいた。
そして、今日も。
「あー、眠ぃ…」
大あくびをしている口に手をあてながら、蓮は教室に続く廊下を歩いていた。
まだ、寝起きで重たい体を動かして、やっとの思いで1−Aと書かれた札の前に着く。
教室の扉に手をかけた時、中から声が聞こえ、蓮は扉を開くことを躊躇する。
途端、2.3人の男達の話が耳に入ってきた。
『にしてもさ、うざくない?一条のやつ?』
「っ!!」
『確かに!!』
『あの頭とか、目つきとか、なめてるよなぁ』
「っ〜!!!」
次から次へと、飛び交う自分への悪口。
居た堪れなくなって俺は、扉を開けるのを止めて、がむしゃらに校舎から飛び出した。
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