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純情なあの子に接する
五つの方法



この度、彼女が出来まして。

良く笑い、良く照れ、良く食べる、私よりも一回り小さな可愛いらしい方です。

出会いはまさかの、偶然歩道でぶつかって私の方から一目惚れ、というベタなアレでして。

連絡先を交換し、何度か逢瀬を重ね、晴れてこの度、というわけで、喜びのあまり、咽び泣く次第でございます。

しかし彼女の口からは、俄には信じ難い言葉が飛び出したのです。

「私、男の人とお付き合いするの、初めてなんです。」

初な彼女を、自分なりに、心底大事に、大事に、していきたい次第で。

STEP1>>初めてのデート編

「お、お待たせしました!」

約束の時間の10分前。随分と早く着きすぎた待ち合わせ場所で、時間をもて余していた私の前に、彼女は現れた。

「ごめんなさい、待ちましたか?」

「っ、」

「……アグニさん?」

「え?あぁ、いえ!」

返事が遅れてしまったのは、何だかいつもと違う貴方に、暫し見とれてしまっていたからで。春らしい淡い色のワンピースが、彼女の膝元でふわりと揺れた。彼女には珍しい、華奢な作りのヒールは、この日のためのものだと、思い上がってしまいそうで。

ぎこちなく、もたついたような甘い雰囲気が、どこか恥ずかしく。それは、どうやら彼女も同じのようで。二人、曖昧にはにかみを交差させた後、行きましょうか、と歩き出した。

行き先は小さな映画館。前々から、彼女が見たいと言っていた、英国の映画が上映されている。



「晴れて良かった。」

「本当に。私、雨女なので、今日心配してたんです。」

「そうなんですか?私は晴れ男ですよ。」

「でしょうね。」

交わされる会話も、どこかぎこちなく。しかしさえ渡る青空の下、何でもない会話を交わしながら二人、並んで歩くというのも、なかなか悪くない気がして、彼女の口から微かな笑い声が漏れる度、心が酷く浮わついた。


交差点に差し掛かり、赤信号に足を止める。晴れた日の休日と合って、信号では多くの人が足を止め、また道路を挟んだ向こう側も、人だかりが出来ていた。

「さすが、休日ですね。」

彼女も同じことを思っていたのだろう。少し背伸びをして私の肩越しに向こう側をうかがっている。華奢なヒールのせいか、その仕草が酷く危なっかしい。

ちゃんとはぐれずに渡れるかな、とポツリ呟く彼女の表情が、どこか不安げに揺れた。その言葉に、ふと下を見る。

肩と肩とが触れ合う程に近いのにも関わらず、お互いの手は、依然として繋がれていない。いくらかの迷いを持ち、もて余したように、虚しく宙に投げ出された手。

眩しいくらいに純情で無垢な彼女の手を、いきなり握ってしまったなら、驚き、その手を引っ込めてしまいそうな気がして。

それならば、と、なるべく優しい仕草で以て、そっと彼女の小指に、自身の小指を絡めた。思った通り、ぴくりとその小指は反応を示す。驚いたような彼女が私を見上げていた。

「はぐれたらいけませんから、」

少し言い訳がましかっただろうかと、小さな後悔の念を抱いてしまうほどの沈黙の後、彼女は伏し目がちにはにかみ、頷いてくれた。

「…安心して渡れますね。」

「っ、」

落とすように、和えかに微笑むその表情と、微かな力でもって握り返される小指に、目眩がするほどの愛しさを感じ、思わずこの場でヒシと掻き抱いてしまいたい感情をむんずと押さえ込む。

嗚呼、彼女のその表情や仕草に、自分の理性はいつまで耐えられるだろうか。


しかしながら隣でふわふわとなんとも幸せそうに顔を綻ばす彼女はやはり何よりも大切で。そんな彼女の笑顔に長期戦を覚悟して、信号が告げた進めのランプに従い、二人揃って足を踏み出した。


STEP1>>初めてのデート

小指と小指を絡めて歩く
(たいへん良くできました!!)

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