CKの章

□小笠原特急
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ワサミンは連絡船に乗ると津軽海峡を渡った。

船客はみな無口で津軽海峡の海鳴りだけが響いていた。

津軽海峡の冬景色を見渡すと、凍えそうなカモメたちが飛んでいた。

船が本州に着くと、ワサミンはアキハバラへ行く為の特急列車に乗った。

ワサミンが乗ると列車から車掌のアナウンスが流れた。

車掌
「本日は『小笠原特急』に御乗車頂き誠にありがとうございまーちゅん。」
「この『小笠原特急』でわたくし、車掌のマーチュンが…」
「皆さんを“夢の世界”へお連れしまーちゅん!!」

車掌マーチュンの挨拶が終わると列車が動きだした。

列車は徐々にスピードを上げ、大陸を南下していった。

だがワサミンはふと疑問に思った事があった。

ワサミン
(所で“夢の世界”って…?)

ちょうどその時…

タイミング良くワサミンの前に、車掌のマーチュンが切符の拝見に廻ってきた。

マーチュン
「どうかしたん、お客はん?」
ワサミン
「えっと、“夢の世界”って…」
マーチュン
「“夢の世界”っちゅったら『ナンバ』に決まってるやろ?」

どうやらこの列車は『アキハバラ』には停車せず、『ナンバ』が終点らしい。

ワサミン
「お願い…」
「『アキハバラ』で“途中下車゛させて!!」

だが、マーチュンは…

マーチュン
「この列車は特急列車…」
「それは無理な話や。」
ワサミン
「そ、そんな〜」

ワサミンの困った顔を見て、マーチュンはある事に気付いた。

マーチュン
「そんな事よりお客はん、もしかして…」
「旅の演歌歌手ワサミンはん、ちゃう?」
ワサミン
「う、うん…」
「そうだけど私を知ってるの?」
マーチュン
「やっぱし…」
「私、親の影響で演歌が好きで…」
「アンタはんのファンやったんや!」
「もし良かったらサインくれへん?」
ワサミン
「わ、私ので良ければ…」

そう言ってワサミンはまだ慣れてない手付きでサインを書くと、それをマーチュンに渡した。

マーチュン
「おおきに!!」

マーチュンはワサミンのサインを手にすると、嬉しそうにはしゃいだ。

そんなこんなしているうちに列車は終点である『ナンバ』へと着いた。

ワサミンはファンであるマーチュンと別れると、今度こそ『アキハバラ』へ行く為の列車を探した。
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