お話 短

□あ い し て た 。
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愛してる、


愛してる、


愛してる。





何度言ったのかわからない愛の呟き。


その言葉に偽りなんてあるはずないのに言う度あなたは顔を歪め、霧とともに消えて姿をくらます。




言う相手は彼しかいない。
彼以外に言ったことなんて、ない。

なのに何故、
そんな顔をするの。




つらい、つらい。




この溢れる思いが伝わらなくて。あなただけに伝えたいこの思いが伝わらなくて。










家に帰ってくるのは夜中過ぎ。
おかえりと言い、ただいまと返される。
そんなささいな会話も嬉しくて。

そのとき香る他の女のにおいは悲しくて。








秘密があるなら、言って。
何回も言ったこの言葉。なのに彼は、何もない。
その一言で片付ける。
















彼から貰った婚約指輪。
これをくれたとき、あなたなんていったか覚えてる?



「ミーは天静しかみえませんから、天静もミーのことしかみないでくださいよー。」



あのときは嬉しくて、嬉しくて。
周りなんて気にしないで泣きながら彼に抱き着いた。








それが、今となってはどうだろう。
私は彼をみている。彼は私みていない。






私しか、彼をみていない。
信じてたのは結局私だけ。







本当は半年くらい前から、私に興味がないことなんてわかってた。
だけどその現実を信じたくなくて。

彼が朝早く出ていって女のにおいをつけて夜遅くに帰ってくるのも、一緒に寝なくなったのも、私に愛してると言わなくなったのも。



すべて目をそむけ、知らないふりをしていた。












だけど、もう限界。

家に女を連れ込んだり、仲よさげに電話をしてたり。



苦しいよ、悲しいよ。










今まで、ありがとう。



好き。
大好き。
愛してる。




いや、あいしてた。













さようなら。
愛しの彼。











あ い し て た 。



(テーブルの上に置き去りにした結婚指輪にそう呟いて、家を出る。)
(彼には幸せになってもらいたいから、離婚届の記入欄をすべてうめて結婚指輪の下においといた。)

(邪魔な私なんて、いなくなればいいんだ。)











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フランの婚約者設定。
浮気をされました。


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