連載小説
□Black更正記 ♯2
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第二話
あっという間の事だった。
いや、言う程短時間でもないのだが、少なくとも矢崎にはそう感じられた。
「さってと!
ん〜…
久々に暴れたぁ〜!」
目一杯背伸びする御浜。
工場跡に佐木部率いる不良達の姿は無い。
先程の御浜が豹変してから約五分。
たったそれだけの時間で、御浜は不良達に圧倒的な力の差を見せつけ、服従させた。
御浜は不良達に命令(脅)した。
『いーい?
君達は真面目に"更正"するんだよ?
今度悪い事したら…
《バキ ベキ》←拳
…わかるだろ?』
不良達は怯えながら、その言葉に必死に頷いていた。
* * * * *
「鳩羽君立てる?
薫ちゃんは…まぁ動けないよね☆」
何時にも増して笑顔が緩でいる御浜。
そんな顔を見て、さっきまでの事で頭が一杯になっていた矢崎の頭は、一気に御浜に対する苛つきで満たされた。
鳩羽は特に出血がひどい左腕を押さえながら、御浜に少し頭を下げてから、静かに工場跡を去って行った。
「傷大丈夫なのかな〜…。
ま、いっか☆
そ・れ・よ・り・も!
薫ちゃん、今日はウチで介抱させてもらうから、このまま僕ん家ね!」
( …はぁッ!?
ちょいまち、今何つったコイツ!!?)
咄嗟に抗議しようとした口が動かない。
抗議する前に御浜が矢崎を負ぶる。
一瞬抵抗しようともがいたが、すぐに薬の所為で全身から力が抜けて、敢えなく御浜の背中に顔を埋めた。
ふと、御浜がにやけ面で呟いた。
「…薫ちゃんって以外とお尻柔らか 《ガッツン》 い゙…ッだあぁっっ!!」
御浜は後頭部に頭突きを喰らった。
その御浜の背中で更なる痛みに矢崎は耐えていた。
(コイツ頭は岩か何かかッ!?)
どうやら相当堅かったらしい。
「あぁはいはい、わかったわかった。
もう変なことはしないから。」
痛みに涙目になっている御浜が、変わらぬ笑みで背中の矢崎にいって聞かせる。
矢崎は暫く気に食わないといった風に頭部を押さえながら、涙目で睨んでいたが、その内力なくまた背中に落ち着く。
そのまま御浜は歩みだす。
いつの間にか、御浜の背中の温もりが心地好くて、矢崎は眠ってしまった。