連載小説
□Black更正記 ♯4
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第四話
放課後、授業の終了を告げるチャイムが鳴るとほぼ同時に、屋上の扉が勢い良く バァンッ と開けられた。
「 !? 」
扉を開けた時の騒音に驚き、矢崎が振り返る。
(開け方がやけに荒々しい … また何かくだんねぇ戯言言おうと浮かれてんのか?
あンのバカ… )
矢崎は振り返りつつ、拳を強く握った。
「 今度は何浮かれてんだッ! とし… !?」
振り返り切ると同時に、相手を見やると。
そこには見知らぬ男子生徒が立っていた。
御浜じゃないとわかって、透かさず拳を下げる矢崎。
「わっ、わり…」
相手の眼までは見れなかったが、悪いと思った矢崎は素直に謝罪した。
その様子をじぃっと見つめる男子生徒。
ふと、男子生徒が矢崎の腕を掴んだ。
「!? ちょッ… わ、悪かったって!
あ、謝っただ…ろ」
弁解しながらも、男子生徒の手を振り払おうとする矢崎だが、男子生徒の手は中々振り払えない。
(なんだコイツ… すげぇ握力ッ!)
《 ギリッ 》
「 っ!!」
もがいたからか、男子生徒は矢崎を握る力をより強めた。
痛がった矢崎を見、男子生徒は初めて硬く閉じていた口を開く。
「これは誠に失礼した。
貴公は丁重に扱うよう言われていたのだが、実に申し訳ない。」
男子生徒はその場で左手を胸元に湛え、浅く礼をした。
しかし彼の右手は矢崎の腕をしっかと掴んだまま。
男子生徒の言葉は堅苦しい単語ばかりで、矢崎には理解不能の暗号のように聞こえた。
「? そ、そういうのは別にいいからさ…
腕、放してくれよ」
「それは出来ない。」
「何でッ!!?」
予想に反する即答ぶりに、矢崎が食って掛かる。
そんな矢崎に淡々と男子生徒が返答する。
「貴公を連行するというのが、自分に課せられた命令だからだ。」
「命令って… !?
…まさかとは思うが…
連行先って“せ”で始まるとこだったりするか?」
矢崎ははたと数時間前のことを思い出す。
瞬間、いやな冷や汗を浮かべた。
男子生徒はまたも単調な口振りで言って見せる。
「察しが良くて何より。
お見事まさにご明察。
貴公の連行先は“生徒会室”だ。」
言うなり男子生徒は屋上を出ようと矢崎の腕を強引に引いた。
「 嫌だ!
行きたくねえぇッ!! 」
矢崎は必死にフェンスにしがみついて拒んだ。
その姿、まさに駄々をこねる幼児のようだったという。