連載小説

□Black更正記 #5
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第五話



「おーい、日向くん降伏したわよ〜 … て、なぁに?
この惨状は。」

「実はかくかく然々でして。」

「とりあえず矢崎の傷が思っていたより重いようだ。
今養護教諭の先生を呼んでくる。」

「あー、大体状況は読めたわ…

乱闘中に重症を負わされた矢崎くんを見て御浜くんがキレて、残りの不良を一掃したってとこかしら?
にしてもやり過ぎね、コレは。」

体育館を後にした九条の背中を見て、勘の良い檜垣は全てを察したようだ。



- - - - -



「薫! 怪我はッ!?」

「ん …俊樹」

体育館のアリーナの隅に座り込んでいる矢崎に、必死な顔をした御浜が駆け寄る。

「血は!?止まった!?傷は!?深い!?」

「…んな一気に聞くなよ。
掠っただけ… ぃッ!」

若干強がろうとした矢崎だが、傷を押さえた手が傷口に擦れ痛みを隠すことが出来なかった。

「…薫、傷見せてみろ。」

今度は素直に矢崎が首の傷を押さえた手を放すと、膿んでいないにしろ周囲の肌まで血に染まる程に出血していた。

「――― !!」

予想以上の大怪我に御浜の血の気が引く。

「…ぉ、おいあんま心配すんなよ!
これは俺の不注意で負った傷なんだからなッ!!?」

矢崎が心配をかけまいと無理をして起き上がろうとすると、御浜が強く肩を掴み壁に押さえつけた。

途端

「ひぁッ!?」

矢崎の首に御浜が吸い付いた。
口で患部を吸い上げ、口を放したかと思うと今度は傷をなぞるように何度も舐められる。

「うぁッ… ん、と しき…!!
やめっ… ぅあッ… っ …んッ…!!」

変に朝の噛まれたことも思い出した上、電撃のように痺れて伝わる感覚に、矢崎が喘ぐ。

「…刃物の傷は切られてから、はやく消毒しないと膿みやすいんだ。
いいからじっとしてろ。」

「ぅ…あっ…」

矢崎はなんとなく、御浜が焦っているのがわかった。
御浜が言っていることは恐らく正論で、確かに早急な処置が必要な緊急性も理解出来た。

しかし"この行為"には抵抗せざるを得ない。
舐められる度、変に傷に意識が向いてしまって、思わず甘い声が出る。
自分の矯声を聞くと、恥ずかしさがますます増す。

御浜はと言えば、必死に傷を舐める様はまるで忠実な犬の様。
それだけ矢崎に対し必死になっているのだ。
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