連載小説

□Black更正記 ♯1
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ここに、廊下を疾走する生徒が二人。
前方を走る男子生徒:矢崎 薫。
“極悪最強”の噂が流される不良生徒。
最近の噂は「学校一つをワンパンチで倒壊させた」というあからさまな噂の一人歩きよう。
その矢崎を追って走る男子生徒:御浜 俊樹。
転校生にして新生徒会長。
生徒会長になる際の公約は「神埼西高校の不良生徒を全員更正させる」という一般生徒から見たらかなり無謀なモノ。

「ねぇ、ちょっと〜!なんで逃げるのさぁ!矢崎くーんッ!」

笑いながら矢崎を追う御浜。
意外にも足は速く、運動神経は良い矢崎のペースに、難なく追いついていく。

「っお前こそなんで追ってくんだよ!?
俺なんかよりも更正させるべき不良グループとかあるだろぉがッ!!」

段々と距離を縮められ、焦る矢崎。
苦し紛れに弁解するが、御浜はあっさりと弁解に答えた。

「いや〜!情けない話、あんな公約出した身だけど、始めから大人数と話し合いって訳にはいかないじゃん?
だから、たった一人で学校一つ倒壊させると噂の、まさに一騎当千な不良生徒から話し合いで更正させようかってね〜!
よって僕と話し合いをしてほしいんだけど!
駄目かなぁ〜?
かおるちゃん!?」

《ブッツン》

突如、何かが鈍く千切れる音がした。
前を走っていた矢崎が、左足を軸にぐるりとUターンし、低く体勢を変えて、強く握った拳を御浜に向けて放った。
青筋を浮かべた表情は“怒り”そのものだった。

「その名で呼ぶなっつってんだろぉがッ!!」

矢崎が放った拳の拳圧は凄まじく、風切り音をたて御浜に迫る。
まさに御浜の鳩尾にキマるかという時だ。

《ドグッ!!》―‐‐

不意に矢崎は違和感を感じた。
別に攻撃が当たらなかった訳ではない。
御浜は確かに矢崎の拳を受け、体勢を崩し吹き飛んだ。
ゲホゲホとむせかえり、腹の辺りを抱え込んで蹲っている。

「ぼっ…暴力反た…ぃッ… げほっ」

殴られても御浜の態度は変わらない。
矢崎は蹲る御浜を背に、鼻を鳴らしてその場を去った。
拳を当てた際の違和感が、矢崎の頭には引っ掛かったまま残っている。

「何だ、アイツ。」
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