連載小説
□Black更正記 ♯2
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「綱手〜、絆創膏無い?
薫ちゃんの顔に擦り傷あってさ。」
「全身打撲に加えて擦り傷に切り傷に…随分と一方的に嬲られたようですねぇ。」
矢崎の眠気がまだ残る目が微かに開く。
目の前には御浜の顔。
段々近くなる顔に、眠気など何処かに飛んでいった。
「ッなぁにしよぉとしてんだ、ボケぇッッ!!」
「「あ」」
矢崎が勢い良く起き上がると、御浜ともう一人の男が同時に声を上げた。
それもその筈。
矢崎には先程絶対安静の薬を投与済みだったのだ。
なのに矢崎は盛大に動いてしまった。
勿論、矢崎は二人が声を上げた時点で卒倒した。
「も〜。
いきなり起き上がるから…。
しょぉがないなぁ、薫ちゃんは♪」
「いや、今のは執拗に顔を近づけた若の所為かと。」
数十分後。
再び矢崎が目を覚ます。
今度は御浜しか居なかった。
さっきの事を覚えていた矢崎は、とりあえず寝たまま動かずに御浜にガンを飛ばしまくってみる。
「薫ちゃーん、あっつ〜い眼差しを送ってくれるのは嬉しいけど、今はもう話して大丈夫だから。」
「んじゃ初めに聞かせてもらおう。
てめぇ初め俺が起きた時何しようとしやがったッ!!」
「えー…
まずそこなんだ?
顔に絆創膏貼っただけだよ、あれは。
それとも何?
薫ちゃんは何かあの体勢から考えられるやらしい事でもされたと思ったの?」
ニヤニヤと御浜がにやけ面をする。
言われて赤面する矢崎。
「ばっ … 誰がんな事 …ッ!!」
矢崎は不意に御浜から目線を離した。
その様子を見て、御浜の態度がまた変わった。
「…薫。
そんな可愛い顔すんなよ。」
「ちょ… お前何いっ…」
途端に矢崎の言葉が途切れる。
寝ままの矢崎に馬乗りになり、矢崎の頬に御浜の手のひらが優しく伝う。
「おまっ … 何し…っ 」
「んな可愛い顔して俺を誘った薫が悪い♪」
御浜はにっこりして眼鏡も邪魔だとばかりに何処かへ放る。
(な、なんかまずくないか?
この状況。)
矢崎はこの状況がマズイということしか判らずにいる。
この場の空気に流されるままに、徐々に二人の顔が近づいていく。
二人の距離は、もう数センチ。