連載小説

□Black更正記 ♯3
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「 …失礼しましたっス。」

開きっぱなしだった台所の戸から、朝御飯目当てに入って来た鉄流は、遠い目をしてその場を後にした。



鉄流が去ってから、矢崎は真っ赤になってわなわなと震えだす。

「恥ッずかしいトコ見られたじゃねーかッ!!
こンのド変態がッ!!」

矢崎の羞恥と怒りを込めた蹴りが、御浜の右頬に炸裂した。
煽られて半分以上余裕を失っていた御浜は、いとも簡単にその攻撃をノーガードで受けてしまった。
当然吹き飛ばされた。

吹き飛んだ御浜の体は、台所の壁に勢い良くぶつかり、その騒音にわらわらと人が集まってきた。

「…若? また薫さんにセクハラでもしたんですか?」

「すげぇ腫れ方してんな、右頬。」

「あっはははははははッ!!
と、俊樹のツラぁ…ッ!
何そのツラ、笑うッ!!」

「ぅるっさいわ!!
薫の手料理俺より先に食いやがった挙げ句完食しやがってッ!!」

綱手と虎雄に呆れられ、咲耶に笑われた御浜は、盛大に文句を垂れる。

そんな御浜の横を、傘下の組の連中と同盟組の幹部達が、矢崎に礼しながら通った。

「薫さん、朝飯!
とっても旨かったよ!
是非また食いたいね!!」

傘下の組の一人が、迂闊にもそう矢崎に声を掛けてしまった。

次の瞬間。



「ヤ ツ ザ キ ニ シ テ ク レ ル 。」

鬼の形相で御浜が傘下の組の連中と同盟組の幹部達にかかっていった。

その様はまさに鬼の如く、時に激怒した昨日の咲耶の姿を彷彿とさせる程の獰猛さであった。

悲鳴を上げて逃げ出す傘下の組の連中、止めようと努める同盟組の幹部達、御浜の暴れっぷりに感心するばかりの森羅組。

そんな中。

「 やめろ! 」

一気にその場が静まり返る。

声の主に視線が一点に注がれると、その先には矢崎の姿があった。
御浜に噛まれた首もとを押さえながら、矢崎は御浜に目線を向ける。

「 薫… 」

傘下の組の一人の胸ぐらを掴んでいた御浜の腕が不意に緩む。

「 お前、たかが食い物でんな怒んなよ。
…今度、お前にも作ってやっから…ッ
だから… その、それくらいで拗ねんなよ!
"バカ俊樹"!!」



《 シーン 》



暫し空間に沈黙が訪れる。
矢崎は御浜の反応があるまで、ずっと御浜の方を見つめて(というより睨んで)いた。

すると。

《 ボッ 》

『 !!? 』

突如、御浜が沸騰したように赤面し、フリーズした。


 
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