連載小説
□Black更正記 #5
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《 ドンッ 》
突然
矢崎が御浜の身を押し退けた。
「 …薫?」
「…ッ俺に構うな!
お前なんかさっさと帰れ!!」
大きく手を振り払って、矢崎は御浜を睨みつける。
駄目だ
このままじゃ
"優しさ"に
甘てしまう
矢崎は明らかに何かに怯えた目をしていた。
「薫… 俺が怖いのか?」
「ッお前なんか、怖くない!」
《 キュッ 》
「!!?」
「じゃあ、何にそんなに怯えてるんだよ。」
御浜が矢崎の手を掴む。
「離せ!」
「離せない。
薫が何を怖がってるか言ってくれなきゃ…
俺が薫を守れない。」
「! …ッ」
御浜の手を振り解こうとする矢崎の力が一気に抜けた。
矢崎が抵抗しなくなったのを見て、御浜は再び問いかける。
「で、何に怯えてたんだ?」
「ぅ… と、俊樹…」
「え、やっぱり俺が怖いの?」
若干ショックを露にする御浜。
「ち、ちが…ッ!!
その… 俊樹、に
なんか…近づかれるのが…?
こ、わい…?」
「…?? ナニソレ…」
「じっ、自分でもよくわかんねぇんだよ!
その…俊樹に噛まれても、な、舐められてもなんか…嫌っちゃ嫌なんだ、けどそんな悪い感じしなくって
庇われるのは勘に触る筈なのに、お前はなんか格好良く見えてて…えと
えぇと…ッ!?」
矢崎は必死に弁明しようとしていた。
「 …もういいよ 薫。」
《 ギュゥッ 》
今度は抱き締められた。
「…っ なんかすげぇこ、こわいんだ…
俊樹といると心臓が五月蝿くって…このままお前の近くにいたら止まりそうで…
こんな、五月蝿くなんだ…」
「!!?」
矢崎の方から御浜の頭を自らの胸元に押さえつけるようにして抱き締める。
確かに速くて大きい矢崎の鼓動が聞こえる。
「なぁ…俊樹といたら、俺ッ…死ぬ、のか?」
じっ と不安そうな目で見つめてくる矢崎。
彼はなんて勘違いをしてるんだろう
大好きな人といて死ぬんなら
世界中で"恋愛"なんて禁止されるだろうに
まぁ仮にそうだったら
俺は君に出逢って死にたいものだけど
「…薫は俺のこと、嫌い?」
「あぁ嫌いだ!」
即答。
その回答に若干呆れながらも、御浜は続ける。
「…じゃあ、どうしよっかなぁ…
俺の心臓も、もうすぐ止まりそうなんだ。」
「え…」