夢想

□嗚呼…
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いつもと変わらない教室、いつもと変わらない風景。

俺は今からここで、何かを変えようとしていた。



俺が名無しに会ったのは、小学校に入学した時。

小学生の俺はまだ人と上手く話せなくて、ずっと1人だった。

別に友達が欲しいわけでもないし、寂しいわけでもない。

でも、何か…何かが足りなかった。

それが何なのかは、小学生の俺には分かる筈無くて。

そんな時、手を伸ばしてくれたのが名無しだったんだ。

名無しと一緒に居ると、足りない何かがどんどん無くなっていくようで…。

きっと名無しは俺が持っていない物を持っていたんだ。

小さな頭で俺はそう理解した。



その後に涼野や南雲と知り合って、よく4人でつるむようになった。

涼野と南雲も名無しのお陰で会えたようなものだった。

本当に名無しが居なかったら、こんな俺は存在しなかっただろうね。



小学校を卒業し、俺達は中学生になった。

小学生の頃は遊んでいるだけで良かったけど中学生ともなるとそうは出来ないんだ。

小学生の時は仲の良い友達だった名無しが、いつの間にか俺の中で特別な存在になっていた。

それが「恋」って気づくのに、時間はかからなかったよ。

中学に入って最初は4人で過ごしていたけど、やっぱり小学の時と違う。

そうして俺達は次第に離れていった。

でも俺は名無しを想い続けていた。勿論今だってそう。



そして名無しにも好きな人が出来た。

それが俺だったら、どれだけ良かったんだろうね。

相手はどうやら南雲らしい。

名無しは自分の口から言わないけど、いつも南雲の方を見ているからね。

嫌でも分かるよ。



俺はもう、こんな見ているだけっていうのは止めたいんだ。

だから、今日名無しにこの想いを伝える。そしてすっぱり諦めたいんだ。

既に名無しには、放課後に来てもらえるよう伝えている。

後は名無しが来るのを待つだけ。



『…ヒロト?』

「あ、名無し…」

『どうしたの?話って何?』



遂にこの時が来た。俺は深呼吸をする。



「あのね名無し、よく聞いててね」

『うん』

「俺…ずっと名無しの事が好きだったんだ」

『えっ…』

「中学に入ってからずっとね」

『…ごめんヒロト、私は…』

「うん、分かってる」



その先の言葉はもう知っている事。名無しの口から聞きたくない。



「名無しは南雲が好きなんでしょ?」

『え?』

「これからは名無しの恋を応援する。南雲は良い奴だしね」

『えっどうして…』



かなり動揺してるね。好きな人がバレているんだし、しょうがないか。



「それ位分かるよ。だってずっと名無しの事を見てたし」

『え、あのっヒロト!』



もう…言わないでくれよ。
…でも諦めるには、名無しから直接聞いた方が良いのかな?



「何、名無し?」

『私好きなの風介なんだけど…』








え?








『私、風介が好きなの…』

「え?だっていつも南雲の事見てて…」

『それは晴矢の隣の風介を見てたんだと思う…』



その時、教室の扉が開いた。



「えっ、南雲!?」

「話は聞かせて貰ったぜ」

『晴矢、って事は…!』

「おーい、出てこい涼野!!」

『ぎゃぁぁぁ!!』



涼野が居た。つまり、名無しの話は全部涼野に…。



「名無し」

『はいぃっ!?』

「恋は実ったぞ、おめでとう」

『…はい?』

「…って事はさ、南雲…」

「名無しと涼野は両想いってわけだ。残念だったな」

「(|| ゜Д゜)ガチョーン」

「しかしよぉヒロト…さっきの話って」

「う゛わぁぁぁああ!!」



あまりにも気まずかったので、俺は振り返りもせず走り抜けた。



嗚呼…



(恥ずかしきかな勘違い)
(ヒロト大丈夫?)
(止めてっ今は1人にさせて!)









ラストの勘違いネタの為に、長ったらしい文を書きました。
本当にこんな事あったら恥ずかしいよね。

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