物語

□放課後
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 【放課後】

ざぁざぁ、と音を立てて朝には降っていなかった筈の雨が降っている。

いや、降っていなかった筈、では無い。確実に降っていなかったのだ。現に傘を持ってきていない自分がいるのだから。

はぁ、と溜め息をついてさて、どうしようかと考える。

濡れて帰るという手も勿論あるがなるべく濡れたくは無い。

学園の靴箱の近くで立ち尽くしていると

「どうしたんだ、ジェイド」

と、学園の生徒会長兼幼馴染件恋人(?)がそこにいた。

「いえ…傘を忘れてしまいまして」

「おいおい…今日は午後から雨百パーだって綺麗なお天気お姉さんが言ってただろう」

「…そうですか」

天気予報なんか見ていなかった。

「私をからかう為だけにいるのだったらさっさと帰ったらどうですか?」

いつまでたっても帰る様子を見せない彼に少し痺れを切らしてはっきりと言ってやる。

「…お前ホント素直じゃないよな」

「お褒め頂き光栄です☆」

「褒めてねぇよ…」

はぁ、と溜め息が聞こえた。

溜め息をつきたいのはこっちだと言うのに…

「はっきり言えよ、俺の傘に入れてくださいVvってな」

………

「あなた馬鹿ですか…」

「馬鹿とはなんだ馬鹿とは。相合傘すれば俺もお前も濡れないで済むんだぞ?」

まぁ、確かに、そうではあるが…

「…嫌です」

そう答えてやれば、彼は私に非難の目(何故私が非難の目を向けられなければならないのだろう)を向けてきた。

「文句でもあるんですか?」

「あるに決まってるだろう!!折角俺とお前は恋人同士なのに」

「ち、ちょっと待ってください!!」

なんてデリカシーの無い男だろう。

「どうした?俺は本当のコトを言っただけだぞ?」

「…判りました。貴方の傘に入れてくださいピオニー」

「よく言えました☆」

そして傘を私の上に差した。

どちらからとも無く歩き始める。

隣で、喋りながら歩けばいやでも気づいてしまう、彼の優しさ。

男と女の体格の違いから生まれる差。

彼は私の…女の小さい歩幅に合わせていた。

そして肩幅。

私が濡れないようにだろう。傘がほとんど真上にある。

彼の片方の肩が濡れていた。

ついつい「馬鹿ですねぇ」と呟けば案の定「何でだよ?!」と食いついてくる。

「肩…」と言えば笑って、私を見つめて、何も言わなかった。

そんな、優しい彼といられる、

とても幸せな雨の放課後。

            FIN

→感想?みたいなもの
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