物語
□大好き!
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【大好き!】
「へいか、大好きです」
「俺も大好きだ、ジェイド」
日常茶飯事の、愛の告白。
嘘ではない。私は確かに陛下のことが大好きなのだ。彼はどうか判らないが…嫌ってはいないと思う。
周りの大臣や、部下たちはもう慣れきっているため何も言ってこない。挨拶はするが、それだけ。
ただ、何人かのお偉いさんたちは
「早く世継ぎを」
とせわしなく言ってくる…否、言ってきていたと言うべきだろうか。
何回も言われて飽きたのか、嫌になったのか。陛下がある日突然
「何回も同じこと言ってよく飽きないな」
…本音?を零したのだった。
それからはそのお偉いさんたちも何も言わなくなってしまった。
言われないというのはもう諦められてる証拠。「あまり宜しくないですよ」と一応言ってやったが彼はことごとく無視し、愛してると呟くのだ。
流石にこれはちょっと、駄目ですかね…
そう考えた私は、軽いお説教をしようと夜、彼の私室に向かった。
ドアの前に立ち、そういえばこんなお説教をするのは初めてだな、どんな顔をするんだろうなと思いながら、ノックをする。
コンコン…
「陛下、いらっしゃいますか?」
中から、私の大好きな声が聞こえた。
「お、ジェイドか。入っていいぞ」
こんないつもの声を聞くと説教をする気が失せてしまいそうになる。
まぁ、そんな甘っちょろい感情、思いはかなぐり捨てなければならないけれど。
「失礼します」
相変わらず散らかった部屋の中で彼は家畜…もといブウサギ達と戯れていた。
「どうしたんだ?こんな夜分に」
「あの、貴方が毎日言ってる…あれを止めてもらいたいんです」
途端に彼の表情が曇る。
「…それは俺のことを嫌いになったからか?」
「ち、違います!貴方は皇帝陛下なんですから世継ぎを作らねばならないんです。私なんかに愛を囁く暇があるならどこぞの貴族の令嬢でも捕まえて囁いてください。そしてついでに子供も孕ませてしまいなさい」
…言いたくなかったが此処まで言えば諦める筈…
しかし、彼は、逆にニヤリ、と不敵に笑った。何か間違えたことでも言っただろうか。
「ほ〜ぅ…孕ませてしまえ、ねぇ…」
「…えぇ、そうです。貴方顔だけは良いからそのくらいならできるでしょう」
「貴族じゃなくて、どっかの名門の女でも良いのか?」
「もうなんでもいいですから。身分が申し分ない女性なら誰でも…」
…ん?
なんか、引っかかったような気がする…
「よし、なら早速子作りだ!!」
…気のせいか?
「あ、もう目をつけてる子がいらっしゃるんですか?それなら結構。さっさとベッドに連れて行ってください」
「判った。ジェイド、脱げ」
…は?
「お前名門カーティス家の“御令嬢”だろ?ぬげ」
し、しまった!!
「い、いやへいか?」
「嫌も糞もへったくれもない。孕ませればいいんだろう?」
「ご冗談を!!何のために私がきたと思ってるんですか!!」
「知らん」
「なっ…」
「いやー俺は幸せものだなぁ。皇帝なのにちゃんと好きな相手と結婚できるなんてVv」
「い、いやああぁぁぁ!!!」
数ヵ月後、もう世継ぎを諦められかけていた皇帝の横には雪のように白い肌を持った、元軍所属の女性と、とっっっっっても可愛らしい赤ん坊が二人いたとさ。
おしまい☆