夢之書
□真夜中の訪問者
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それは夜も更ける時刻。
襖の隙間から入る月明かりに照らされて、ふと目を覚ました。
――人影がゆらり、襖の向こう側に見える。
虚ろな意識のまま、むくりと起き上がった私は、その人影に歩み寄った。
「――だれ…?」
襖越しに声をかけると、返って来た声に、思わず体が強張る。
「……俺だ」
――土方さん…?
こんな時間に、ましてや私の部屋の前で何をしているのか。
いや。こんな時間だからこそ、何の用もなく土方さんが私の部屋なんかに来るはずがない。
少しだけ襖を開けると、私よりずっと背の高い土方さんが、寝間着姿のまま、私を見下ろしていた。
月の明かりを背に受けて、一層鋭く、けれど憂いを帯びた瞳が私を釘付けにする。
「あの……どうかしましたか?」
恐る恐る口を開く私。
今日の昼間、何かミスでもしてしまったんだろうか。
唐突に思い立って、私を叱りに来たのだろうか。などと、思い返してみるものの、何も思い当たらない。
「土方さん……?」
沈黙したままの土方さんを覗き込むように見上げると、突然、ガタンという音が耳についた。
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