ぷよ小説2
□お兄さまと私
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「おにいさま〜、まってください〜!!」
緑の髪をサイドでお団子にした少女、リデルが追いかけているのは…。
「ええい!何度言ったら分かる!!私に妹などは居らん!!早く家に帰れ!!」
緑の髪に大きな角を持つ闇の貴公子サタン様である。
リデルは自分と同じく角のある人物に初めて巡りあえたため、サタンのことをお兄さまとよんでは付いて回っていた。
「でも〜…、私が勝ったらお兄さまってよんでもいいって言ってくれました…。」
痛いところを突かれサタンはぐっと身を縮める。
そう、サタンはこの小さな少女に数日前にぷよぷよ勝負で負けていた。
いつもならこんな小さな子どもにまけることなどないのだが…負けは負けである。
「呼んでもいい、と言っただけだ!!本当の兄になるとは言っておらん!!それに私には愛しいフィアンセが…。」
「それってアルルさんのことですかー?アルルさんならさっきシェゾさんと広場で楽しそうにお話してましたけどー…。」
容赦ない天然の毒舌はリデルの得意技である。
「うぐっ…!わ、私はアルルを自由にしてやっているからな!一回や二回の浮気で嫌いになったりなどせん!」
「へえ〜…すごいですね、お兄さまは…!心が広いんですね。私、尊敬しちゃいます〜。」
そう言ってにっこり笑うリデルは角が生えていながらも天使のように愛らしい。
サタンはそんなリデルの笑顔に一瞬目を奪われた。
「…まあ魔王としては当然のことだ。」
「えへへ、それにお兄さまはとっても優しいです。」
「は?」
言われたこともないことを言われサタンは耳を疑った。
「こんな私なんかと仲良くしてくださって、お兄さまにもなってくれて、私とっても嬉しいです!」
そい言ってまたにっこりと笑うリデルにサタンもつられて笑みをこぼした。
「…まったく…、しょうがないやつだな。」
そう言ってリデルの頭をぽん、と軽くたたいた。
「…わたし、お兄さまと一緒だったら自分の角を恥ずかしがらずになる日が来るかもしれないって思えるんです…だから、お兄さま…。」
リデルが真っ直ぐにサタンを見据える。
「それまで、一緒にいてくださいますか?」
そのときのリデルの瞳があまりにも綺麗で悲しそうで、サタンは目を反らすことができなかった。
「…あたり前だ。」