ぷよ小説2

□凍てついた蝶
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季節は冬。

雪がちらちらと降っている。


あたしとシグは森を散歩しながら話をしていた。


シグが動きを止めた。


あたしはシグの後ろに居たため、急に歩くのを止めたシグの背中に顔をぶつけた。


「ぶ!!ど、どうしたの?シグ…急に立ち止まったりして…。」


「あ、ごめん、アミティ…。大丈夫?」


普段あまり変わらないシグの表情が何だか悲しげだったので。


「…どうかした…?」


シグの肩をずらし前方にある景色を見る。


そこにあったのは。


「あ、ちょうちょ…?」


シグが黙って頷いた。


「こんな季節に珍しいね…。」


大好きな虫を見てシグがこんなに静かなのは何故か、よく鈍感だと言われる私にもわかる。


「…もうすぐ、この子は動かなくなるね。」


蝶は羽もところどころ破れていて、色もほとんどない。
この蝶は元は何色だったんだろう。


ジグがつぶやいた言葉をあたしは何度も反芻した。


寒さに震える蝶。


儚くて、今にも動かなくなってしまいそうな。


あたしは無意識にシグの背中にしがみついていた。


「アミティ…。」


震えが止まらなかった。


なんでそんな風に思ってしまったのかは分からないけれど、あたしは、その蝶をジグと重ねて見ていたんだ。


いついなくなってしまうか分からない。


掴んだら空から降ってくる雪のように消えてなくなってしまうようで。


ジグの服を掴む手に力が入る。


「…どこにもいかないで。」


蚊の泣くような小さな声だったと思う。

それでもジグは頷いて言ってくれた。


「どこにも行かないよ、アミティのそばにいる。」


そう言って、やはり儚く笑うんだ。


ゆっくりこぼれ落ちる涙を拭うシグの指の温もりが私を落ち着かせてくれる。


かみさま。


どうか私とシグをはなればなれにしないで下さい。


シグを冷たい世界につれていかないで下さい。


ただ、それだけをひたすらに願う。



end
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