ぷよ小説

□虫になりたい
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君の先には。


いつも。




「あーっ、珍しい虫発見ー。」


シグの見据える先にはかならず彼らがいる。


「アミティ、ごめん。僕あいつを捕まえてくるー。」


「うん…わかった。珍しい虫なんだもんね…頑張って。」


「ありがとうー、また今度ねー。」


そう言って秒速で走り去るシグ。


あーあ…また負けちゃったよ。


虫に…。


せっかくいい感じにお話できてたのに…。


虫が絡むとすぐこれだもの。


「シグのばーかっ!」


近くにあった木に向かって叫んだ。


私も珍しい虫になれたらシグに追いかけてもらえるのかなあ…。


そんなこと無理だけど…。


その場にうずくまる。


「ばかばかばか!!シグのばーかっ!!」


むしゃくしゃしてまた同じ言葉を繰り返す。


こんなことしたって無駄なのに…。


「誰がばかだってー?」


後ろから声がした。


え…まさか…。


「し、シグ!!」


後ろにはさっき虫をおいかけていったはずのシグが立っていた。


「なっなんで…?む、虫は?」


シグはんーと言って首を傾けると言った。


「だってアミティがなんか元気なさそうだったから戻ってきてみた。」


えっ…あのジグが…虫を諦めて私のところに…?


私はいつもより鼓動が強くなるのを感じた。


「そしたらアミティが僕のことばかばかって言ってた。」


「う…そ、それは…。」


「どうしたの?もしかして、怒ってる?」


「怒ってないよ…ただ…。」


「ただ?」


「虫さんに…ちょっとやきもちやいただけ。」


「なんでー?」


「なんでってそりゃあ…。」


ジグの顔をみると、なんだろう…なんとなく笑っている気がした。


「シグ…まさかわざとわかってて言わせようとしてない?」


私は頬を膨らませた。


「あちゃー、ばれたかー。なら仕方ない。」


シグが私の両手をぎゅっと握った。


「僕は虫よりアミティが好き。」


真っ直ぐな左右色違いの瞳が私を捉えた。


「アミティは?」


「…私も虫さんよりシグが好き…。」


「良かったー。」


シグが笑みをこぼす。


私もつられて笑った。


握られた手の体温を感じながら。




end
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