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□ラブレターのお返事は?
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『好きだ。
レイ』
下駄箱に入っていたのは、
そんなあっさりとした一通の手紙。
手紙と言っても封筒に入っているようなしっかりとしたものじゃなくて
四つ折りした紙の真ん中に
ちまっとかかれた、ソレ。
朝登校して下駄箱あけて、
そこに手紙があったことにも驚きだけど、
書いた紙にも驚き。ルーズリーフって。
なんて斬新なんだ…!
って、いやいや。そうではなくて。
「レイって…誰よ?」
《ラブレターのお返事は》
キャー!
「なにしてんだ…?」
騒がしくなった周囲と、
後ろからかけられた声に、
俺は随分とここで立ち尽くしていた事を知る。
俺はいつもゆとりを持って早めに登校するのに、いつも遅刻ギリギリ(つうか遅刻)のコイツと下駄箱で会うなんて…。
「あー、はよ。高峯。」
「…おう。」
遅刻魔、もとい高峯 零(タカミネ ゼロ)
黒髪ワイルド系イケメンだ。くそ。
「で、何してんの。」
聞きながら俺の肩に顎乗っけて手元を覗き込んでくる高峯。おい、やめろ、暑苦しい。
そして周囲がうるさい。
コイツが一挙一動するごとにキャーキャー騒ぎやがって。
…別に僻んでる訳じゃないぞ。
男にモテたって嬉しくないし。
そうそう、説明が遅れたが、
俺らが通うここは男子校。
さっきからキャーキャー言ってんのも勿論みんな男だ。
本当についてんのか怪しいちみっこ達だが。
「あー、とりあえず「藍沢!」…あ?」
とりあえず離れろ、と高峯に言うはずだった俺の言葉は、誰かの声に遮られた。
「…なに?」
ちなみに藍沢ってのは俺の名前だ。
藍沢 桐生(アイザワ キリュウ)、高校二年生やってます。
つかでっかい声で呼びやがって。
ただでさえ高峯のせいで目立ってんのにこれ以上周りの注目を集めるような事しないでほしい。あ、こら高峯。抱きつくな。
俺の肩に顎乗せたまま、腹に腕回してきた高峯。
そんな高峯のせいでまたキャーって歓声があがったのは言うまでもない。
高峯に抱きつかれて身動きのとれない俺は、当然声の方を振り返る事も出来ないわけで。
「おい、高峯離せって。」
「俺とお前の仲だろ、ハニー。」
「人が見てるのに恥ずかしいわ、ダーリン。」
…ついノってしまったが、デカい男二人が抱き合いながらこんな会話してたら怖いよな。しかも真顔で。
「それじゃあ人目のないところでも行こうか、ハニー?」
「いやん、ダーリンのえっ「藍沢っ!」ち…」
…2度目なんだけど、遮られるの!
何俺に恨みでもあるのか、そうなのか。
俺のセリフを遮ってきた奴は、俺らが一向に振り向かないことにじれたのか、自分から回り込んできて俺らの正面に立った。
「藍沢!」
「さっきから何…つか近いんだけど。」
「…」
正面っつかもう顔の真ん前に立つソイツ。
なんでこんな近いのよ、
あぁ、ほら、人見知りのダーリンが緊張しちゃったじゃない。
…いや、マジ冗談抜きにさっきから締め付ける腕の力が強くなってて口からなんか出そうなんだけど!
「ダー、リン。愛が苦しい…」
「あぁん?」