みじかいゆめ

□彼女の秘密、僕の秘密
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イタリア、ボンゴレ本部の屋敷。その廊下をなまえさんと一緒に歩いていた。

「なまえさんってー、何でマフィアになったんですかー?」
「いきなりどうしたの、フランくん」
「なまえさんマフィアっぽくないじゃないですかー」

ボンゴレファミリーの一員であるなまえさんは、マフィアとして実にふさわしくない人だった。
見た目は至って普通の少女で、円満な家庭で育ったような穏やかな性格をしており、マフィアと言われなければわからないほど、こちらの世界とはかけ離れた雰囲気していた。

「マフィアっぽくないといえば断然綱吉さんでしょ」
「なまえさーん。質問の答えはー?」
「…ええっと」

話をそらそうとしたなまえさんに再度聞いてみると、彼女は目をそらしもごもごと口ごもった。
頬を少し赤らめ「笑わないでよ」と恥ずかしそうに呟くなまえさんを可愛いなと思うと同時に、そんな笑うような理由なのかと不思議に思った。

「す、好きな人が、マフィアだったから…」

「は…?」

予期せぬ言葉に思わずポカンと口を開け、立ち止まってしまった。
好きな人がマフィアだったから?
好きな人を追いかけて、と言えば一見ロマンチックに聞こえるが、なんといってもマフィアである。
いまいち理解しきれずにいると、なまえさんは照れ隠しするようにサッと前へ踏み出し歩いていった。

「フランくん、今の内緒だからねー!」

こちらへ振り返りそう叫ぶと勢いよく走り去って行った。
一人ぽつんと広い廊下に取り残される。

「なまえさん乙女だなー」

なまえさんをマフィアにしたのは誰なのか。
先ほどの顔を赤くした彼女を思い出すと、胸の奥がちくりと傷んだ気がした。


彼女の秘密、僕の秘密


2011/4/20

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