みじかいゆめ

□青い薔薇の花びらが一枚散った
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くだらない。
愛なんてくだらない、と吐き捨てた少年は、誰よりも目の前の少女を愛していた。

「その気持ち、わからなくもないけど、抱きしめながら言うセリフじゃないよね」

少年の腕の中にいる少女がそう答える。
しばらく大人しくしていた少女だが、いつまでたっても動きがないので彼の腕から逃れようともがく。
しかし、その結果さらに強く抱きしめられることになる。

「一応言っておくけど、このまま絞め殺さないでね」
「そうですね。いっそ君をこの手で殺してしまいたい」
「わーお、だからやめて下さいって言ってるのに」

少女の言葉に少年は眉をひそめ、ため息をつく。

「ちょっと黙っててくれませんか」
「だったら離してください。そろそろ心臓が限界です」

頬を赤に染めた少女の顔を見た少年は、満足したように微笑む。
ゆっくりと腕の力をゆるめめ少女を解放した。

「相変わらず可愛らしい反応、ありがとうございます」

クフフ、と笑った少年に少女は目をそらしながら口を開く。

「骸は、相変わらず不可思議な言動をするよね」
「僕もそう思います」

自覚あるのか、と少女は呆れた顔でため息をつく。
骸はオッドアイの瞳で少女の瞳を捉えると、名残惜しそうに目を細めた。

「また会いましょう、なまえ」

その言葉を合図に、なまえは闇に包まれる。

ベッドの上で目を覚ましたなまえ
一度息を吐き出すと、再びまぶたを閉じた。
その瞳からは、ひとしずくの涙がこぼれて落ちていく。


青い薔薇の花びらが一枚散った
(瞳を開けても君はいない)


2011/5/31

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