モワッときた!!

□自転車と君と。
1ページ/2ページ

あさっぱらから走る自転車。
ガシャガシャと五月蝿い音がなる。
アホみたいに必死に自転車を漕ぐ僕。
僕の家から少し遠い駅に向かう。
だって、早く行かなきゃ君はどこかへ行ってしまう。
玲奈。。。。どうして僕に行ってくれなかったんだ!!
そう、事実を知ったのは昨日の夜。
仲良しの佐江ちゃんと電話をしていたときだった。

佐「そういえば、玲奈、明日の朝早くに別の町にいっちゃうんだよね」
『は?聞いてないけど?』
佐「え?あれ?名無しさんに言ってないの?おかしいな?」

その時点で僕の思考回路は止まりそうになった。
確かに、最近僕を避けていた感じはしていた。
だけど、何故僕にいわないんだ?

『ごめん!佐江ちょっと玲奈のところ行ってくる!!』
佐「え?あ!?ちょっ!!」

佐江が何か言おうとしてたけど、途中で切ってしまった。
玲奈の家に自転車で向かう。
その間、玲奈に電話してみたり、メールしたけど、どれもとってはくれなかった。

『はぁはぁ、、玲奈』

家の前でもう一度メールをしてみる。
何分たっても返信はこなかった。
こうなったら、家にあがるしかないよな。
インターホンを押してみる。
しかし、誰も出てこない。
何回か押したけど出てこない。
諦めて、自転車に乗ろうとしたとき、ドアが開く音が聞こえた。
振り返るとそこには、君が立っていた。

『玲奈!!』

名前を呼ぶと君は泣きながら僕に抱きついてきた。

玲「ごめんなさい!もう、名無しさんとは会えない!」
『なんだよ?何があったんだよ??』
玲「私からは言えない。けど、きっとわかる。この小さい町なら。」

ますますわからなかった。

玲「ごめんね。私は名無しさんとはいれないよ。一緒に幸せにはなれないの」
『意味わかんないよ!』

玲奈は僕の鎖骨あたりに顔をうずめなが話した。

玲「私が一緒だと名無しさんが幸せになれないの!!」
『そなこと・・!!』
玲「あるの!!」

いつになく大きな声でいった。

『あ、玲奈?』
玲「ごめ、、、ん」
「玲奈!なにしてるの!?早く戻りなさ!!」
玲「あ、お母さん。今戻る」
『れ、、な?』
玲「だから、別れよう」

僕のなかで何かが崩れていく音がした。

帰り道自転車を押しながら佐江に電話する。

佐「あ、名無しさん!」
『佐江・・・』
佐「どうした?」

心配そうな佐江ちゃんの声。

『明日、玲奈何時に出発するかわかる?』
佐「えーと、、、電車でいくとか・・・・あ、一番朝早い時間だった!!」
『ありがとう』

それから、いろいろ話して電話を切った。
今日はもう眠い。
寝よう。

『寝れるわけがなかろうが!!!』

結局寝れずに、朝を迎える。
朝日が目にしみるぜ★
まだ家族は寝ているようだ。
起こさないようにそっと家をでる。

『行ってきます』

そして、自転車を漕ぐ。
朝早いせいか誰もいない道。
走りやすいんだけどね。

ガシャガシャシャー

相変わらず五月蝿い自転車。
錆び付いてるからな。

『玲奈!!』

時間が迫っている!!
早く駅につかなきゃ行ってしまう!!

ガチャン

さすがにホーム内には持ってけないだろう。
自転車は入口付近に置いておく。
どこだ!?どこにいるんだ??
目の端に見えた、見覚えのあるワンピース。

『玲奈!!!』
玲「な、なんで?」
『僕は、どんなことがあっても君が・・・!!』
「ほら、玲奈!早くしなさい!!」
玲「名無しさん!ごめんなさい!!私は、名無しさんのこと絶対忘れないよ!!私はずっと名無しさんのこと「玲奈!」

玲奈は、お母さんに手をひかれてそのまま電車に乗った。
最後の言葉が聞き取れなかった。
ゆっくり動き出す電車。
こんなところで立ってる場合じゃない。
体の方はすぐ行動に出ていた。
僕は、いつの間にか自転車に跨っていた。
まだ追いつける!
下り坂になっているのが幸い。
坂の力も借りてなんとか追いつく。

『玲奈ぁぁぁぁぁ!!!』

ここから見たって分かる。
君は泣いていた。
泣きながら、こっちに向かって小さく手を振ってくれた。
精一杯の君からの信号。
あんなに大事にしてた自転車なのに、、

ガシャン!!

スピードがつきすぎた自転車は倒れた。
痛い。。けど、それもどうでもいいくらい僕は玲奈のことが好きみたいだ。
コケても走り続けた、走って、電車が通り過ぎて、君がこの町からいなくなった。
呆然と立ち尽くして、時間が経って、自転車をとりに戻る。

『痛い。。』

気づけば、さっき転んだせいで体中怪我だらけ。
自転車は奇跡的に壊れてはいなかった。
傷だらけにはなったけど。
また、自転車に乗って帰る。
やっと動き出した町を見て、なんて平和なんだと思った。
どういう理由かわかんないけど、きっと悪いことがあってどこかへ行ってしまった君。
そんなことがあったって、君がいなくたって、町は動き出す。
何もなかったみたいに。
平和に。

「聞きました?松井さんのお家」
「聞いたわよ。なんか、旦那さんが・・・」

ご近所さん同士の噂話。
確かにこの小さな町だとすぐに広がる。
そういうことか。
裏のお金に手をのばしてしまった。
そういうことか。
恥ずかしいからこの町にいれない。
そういうことか。

『どういうことなんだ。。。。』

僕にはまだ、大人のことがわからない。
君が前に言っていたように、僕はまだ子供なんだよ。
だから、わからない。
なんで、一緒にいられなくなるのか分からない。
学校にいてもその話でもちきり。
みんなの中で絶賛大ヒット中。
それからしばらくしてその話も消え、みんなから、君も消えた。

『みんな、バカだから』
柏「またそんなこと言う」
『だって、そうだし』
柏「はいはい」

なんだかんだでいつも話を聞いてくれる由紀。

柏「じゃぁさ、名無しさんが玲奈のこと迎えに行けばいいじゃん」
『はぁ!?』

急に何を言い出すんだこの人は!!

『いやいや!!どこにいるか分かんないのに?』

しばらくの沈黙。
先に口を開いたのは、由紀だった。

柏「私、知ってたりするんだよね」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ