モワッときた!!
□あれがあれなんです。
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病院に運ばれた名無しさんはなんとか一命を取り留めた。
それから3日は寝ていたと思う。
「早く起きろよー。寂しいよ。」
ちょっと涙声になる。
『んん、、、、』
名無しさんの声がした。
顔を見ると少し苦しそうな顔をしていた。
でも、名無しさんの見せた久しぶりの表情が嬉しくて仕方なかった。
「名無しさん!起きて名無しさん!!」
本当は医者を呼ぶところなんだろうが、私はあの時みたいに必死に名前を呼んだ。
『っはぁはぁはぁ・・・。ふー。』
目を大きく見開いて飛び起きた。
「名無しさん!やっと起きてくれた!」
嬉しくて嬉しくて、名無しさんに抱きついた。
なのに、
『ここ、、どこ?』
「病院だよ?もー名無しさんってば3日近く寝てたんだよ?」
『なんでですか?』
「??えっと、暴走トラックにひかれちゃって・・。」
なんか様子が変なんだ。
不安で胸がいっぱいになる。
ちょっと離れて名無しさんの顔を見る。
『ところであなたは誰ですか?』
私の中で何かが壊れた。
「え・・・?」
『すいません。知り合いだったみたいなんですが、全くわからなくて』
怖くて怖くて、足が震えて、目の前が真っ白になって、大好きな名無しさんが何かを話してるのに全く耳に入ってこなくて。
『あの、ごめんなさい』
わからない。何が起きてるのか分からない。
『あ、ちょっと!!』
いつのまにか私はその場から逃げ出していた。
走って、転んでも走って。
洋服は汚れていてボロボロ。
家までどうやって帰ってきたかもわからない。
消失感。
「名無しさん、、私はどうすればいいの?」
それから名無しさんに会うのが怖くて、数週間病院にも会いに行かず、一人部屋に閉じこもっていた。
「どうすればいいのか分かんないよ」
携帯をぎゅっと握り締める。
〜♪〜♪〜
握りしめていた携帯が鳴る。
ディスプレイを見てみると、公衆電話からだった。
「はい。もしもし」
『あのーすいません。失礼ですが、お名前をお伺いしてもいいですか?』
それは愛しの人からの電話だった。
「な、なんで?」
『え、あ、ごめんなさい。突然』
「名無しさん・・?どうして電話・・?」
確か携帯はあの時壊れたはずだし、それ以前になぜ覚えているんだろう?
『頭のなかにずっとこの数字が浮かんでて、電話番号かなって思って』
「私は!私は前田敦子!あなたは今どこにいるの!?」
『僕は、病院だよ?やっと動けるようになって・・あn「今すぐ行きます!病室で待っててください!!」あぁあの!って切れちゃったよ。』
夢中で走った。今度は転ばないように、おしゃれもして。
病室のドアの前で息を整える。
いっちょ前に個室だ。
前行った時は、そんなことも考えられなかったな。
ガラガラー
『やぁ。早かったですね』
そこにはいつも通りの笑顔があった。