モワッときた!!

□あれがあれなんです。
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まだ、額には傷跡がうっすらみえる。
でも目立たないし、医療の進歩はすごいものだと思った。

「元気?」

名無しさんの座っているベッドに近づく。

『元気ですよ』

やっぱり私の知ってる名無しさんじゃない。
何を話していいか分からない。
たじろいでいる私に名無しさんは優しい声で話しかけてきてくれた。

『どうぞおかけください』

促されて椅子に座る。

『実は、いろいろ思い出したことがありまして、、、』

どんなことを思い出したんだろう?

『一つが、あなたにかかった電話番号。
そして、何か大事なことがあったこと。
でも、その何かがあともう少しで思い出せないんです』

それって、私のことなのかな?
少し期待をして名無しさんを見る。

『この電話番号があなたの携帯でよかった』
「どうして、、、ですか?」
『ずっと、あなたの顔が、、笑顔が頭の中に浮かぶんです』

これ以上思い出せなくて、、すいませんと謝る名無しさん。
その表情は、とても辛そうで、悲しそうだった。

『大切な事だと思うんです。
あなたのことを思い出すことが』

一生懸命に私を思い出そうとしてくれてる。
私は何ができるんだろう?

『どうしたらいいんでしょうか?』

もしかしたら、今私がやろうとしてることは嫌われるだけかもしれないけど、、、やってみなきゃわかんない。
名無しさんの洋服の襟をぐいっと両手で掴む。

『な、なんですか?』
「なんで、、なんで敬語なんだよ!!
いつもみたいに喋ってよ!!
そんな敬語似合わないし、バカみたいにしてるほうが名無しさんっぽいし!!
だいたい、記憶なくしたーとか言ってさ! 他の女の子とでも遊んでんじゃないの!?
私がいるっていうのにいつも他の子とも遊びに行ってたし!!?
友達って言ってたけどそれも本当か分かんないじゃん!!
いつもいつも心配させて!!」
『え・・?は?』
「とぼけんなバカっ!!だいたい何回私を悲しませる気!?」

いろいろ言ってたら本当にムカついてきた。
無意識の内に一発平手打ちしていた。

パチィン!

『!?』
「浮気の回数だって忘れたとかって『2回』へ?」
『浮気の回数は2回でしょ?あっちゃん♪』

ふんわりとした笑顔で悪びれた様子もなくそういう名無しさん。

「やっぱ、記憶喪失してるんだよ♪3回だし!」
『そうだったごめんねあっちゃん!』
「いいよ。もう許してるし、何より記憶戻って嬉しい!!」

それから二人でハグして、見つめて、キスする雰囲気に。

ガラガラー

「名無しさんさーん。ケガの様子はどうですか?」
『わあぁあ!大丈夫ですよ!!』
「(恥ずかしっ//)」

危ない危ない//
名無しさんを見ると耳が真っ赤になっていた。

「記憶のほうはどうですか?」
『えぇ。それが、さっき思い出しまして!!』
「本当ですか!?」
『はい!あっちゃんのおかげで!!』
「あっちゃん?」

看護婦さんが頭上に?を浮かべる。

「あ、えーと私です!」
『可愛いでしょ?あっちゃんのおかげだよ!!本当にありがとう!!』

ぎゅーって抱きつてくる名無しさん。

「すぐにでも退院できますね♪」

そういって看護婦さんは多分手続きか何かしに行ったんだと思う。

『もう、絶対あっちゃんのこと忘れないよ?』
「その言葉忘れないでね?」
『おぉっと。何だか黒いオーラが』

また記憶喪失にならないように帰ったら私でいっぱいにしてやる!

「覚悟しといてよね?」
『あ、え、なに?』

何だか帰るのが楽しみです♪
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