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□【feeding 続編】
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―♪・・・♪♪


「あ、おはようございます勝呂さん」
「…ぉはよーさん」



【feeding!!】続編



 毎日同じ時間に水を買うだけだったこの人が、「勝呂」という名前だと知ったのは次の日のことだった。
 何故かとてつもなく緊張した面持ちで改まって自己紹介されたから、つい俺まで緊張して自分の名前を噛んじまったのを覚えてる。

 それ以来「いらっしゃいませ」は朝の挨拶に変わり、レジで少しだけ立ち話をするようになった。


「ホント、毎日よく続きますよねぇ。俺、絶対無理っす」
「自分の生活リズム壊せへんからな、学校もあるし」
「そっかー、学校…って大学?」
「は?まだ高校生やぞ」
「3年生?」
「まだ1年や…」


 ぶっちゃけ、落ち着いてるというか大人っぽいから社会人だと思ってた。俯き加減の勝呂さんの顔がどんどん真っ赤になっていくのが分かる・・。


「ってことは同い年?」
「…せやな」
「…ゴメン」
「………」


 もしかして老けて見えるの気にしてた?あー気まずい!!どうすりゃ、いいんだ俺!?


「あ、あの!今度うちに飯食いに来ません!?」


 場の空気を変えたくて咄嗟に昨日オーナーであるメフィストと話し合った企画のことを持ち出した。
 突然の俺の申し出に、勝呂さんはビックリして真っ赤な顔のまま固まってしまう。


「うちのコンビニで手作り弁当出すことになって、それの試食会みたいなのをやるからそれで良かった来てくれると…」
「な、なんやそういうことか!」
「???」

 
 あ〜ビックリしたわぁ。なんて言いながら勝呂は顔をパタパタと仰いでいる。どうしたんだろう?


「俺みたいな部外者が行ってもかまへんのか?」
「逆にお客さんの反応も見たいってオーナーが…俺、勝呂さんしかお客さんで知り合いいないし…」


 自分で言ってて少し恥ずかしくなる。いくら仕事中とは言え他の皆はもう少し顔見知りのお客さんがいたり、元々の友人が遊びに来ているというのに俺はと言えばほとんど知り合いがいないのだから。
 それにいくら挨拶をする仲になったとはいえ、プライベートにまで誘うのはさすがに馴れ馴れしいんじゃないか俺!?グオー。
 

「お、俺で良ければ…」
「へ?」
「行くって言ってんねん!」


 顔を真っ赤にしたままの勝呂さんはまくし立てるようにそう言ってくれた。


「マジか!?やったー!ありがとう!!」
「〜〜っ!!」


 自分から言い出しておいて絶対に断られると思っていたから嬉しくなって。思わずレジ越しに勝呂さんの両手を握っていた。


「今度の日曜日の夕方なんだけど大丈夫ですか?」
「お、おう」
「場所はこの近くにある、南十字男子修道院なんだけど知ってます?」
「おう」
「そこ、俺ん家なんだよ当日そこに来てください!あ、携帯の番号とか交換しといた方が良いよな…」


 俺はズボンのポケットに忍ばせておいた携帯を取り出し、赤外線を求めた。


「俺、携帯買ったばっかで登録してあるの弟かバイト先の奴らばっかだったから勝呂さんが友人一号っす」
「なッ!!」
「あっ、すんません…お客さんを友達なんて図々しいっすよね…」
「ちゃ、ちゃう!友達でええねん!!」
「ホントか!?」
「おう、だから"さん"付けへんでええよ、敬語もいらん」


 頬をポリポリとかきつつ視線を逸らす勝呂がとても硬派に見えた。


「じゃ、じゃあ、俺のことも奥村でいいから!」


 思わず嬉しくって満面の笑みになってしまう。やっと友人になれた気がした。
 それから俺達は連絡先を交換し、勝呂はランニングに、俺は仕事に戻ったのだった。
 勝呂はと言えば顔を真っ赤にしたままだったから熱中症なんではないかと少し心配になった。





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