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□友人より
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「降りろ。今すぐにだ」
「だが断る。だから、2人で乗ればいいだろ?」
「というか、何で2頭連れて来なかったのよ」
「俺、1頭しか持ってねぇもん」

ほら、早く行こうと、馬に乗ったまま奴は私に手を差し伸べる。
このままじゃ仕方ないので、しぶしぶ、その手に自分の手を乗せた。

ぐい、とひっぱりあげられ、ゆっくりと腰をおろす。そしてすぐに馬は歩み始めた。

「どうしてついてこようと思ったの?」
「お前が出かけるっていうから。…何かあったら心配だし」
「…そう」

「勇者様は暇ですね」なーんて皮肉を言おうと思ってたのに、嬉しくなるような切り返しをされてしまった。───なんでそんな事を照れずに言えんのよ、馬鹿。

彼は優しいから、私にだけこういう言葉を言ってる訳じゃない。
馬に乗せようと思ったのも、下心なんかなくて、ただ早く済むからだろう。
…その事実は私の胸をチクリと刺す。そrでも、と思うのは女の性。私は嫌い。

「2人乗り、悪くないな。お前となら」

びっくりして彼の顔…うしろ姿をみる。
表情はわからない。でも。

───よし、チキン離脱。

私は返事の代わりに、彼の大きな背中に体を預けた。

2人の耳は、夕日よりも赤かった。



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