まえがき

□夏
1ページ/1ページ

二〇二八年、夏 午後二時



少年は本を読んでいた。
今日は平日であり、普通ならば同級生と高校の特進クラスで授業を受けているべき時間に、少年は自室で本を読んでいた。
最早、学校に行く理由など無いに等しいのだ。

通うべき学校は既に学校として機能しておらず、職を無くしかけた大人達だけがいる場と化していたからだ。
暗い表情で、何時如何なるときにも火のついていない煙草をくわえ、生気など微塵も感じられないような、虚ろな目をした“先生”達が。
数年前までは生徒数約五〇〇人以上と、賑わっていたその学校に、現在はその少年と、他に指折り数えられる程しか居ないのでは無いだろうか。

その学校が廃れた、と言うわけではなく日本中の小学校、中学校、高等学校、その他の専門学校など学生が集う全ての機関が、学生が不足するという状況に陥っていた。
敢えて言うのであれば、日本全体が廃れた、というところだろう。




0610 執筆中

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ