GOTH -Feat.NISHI-

□GOTH 夏ノ夜ノ夢
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俺と松坂が話すことになった最初のきっかけは

ちょうど学校のパソコン室でHPの更新をしていた時だった。




薄暗くて広いパソコン室の
重い扉が開いて

松坂は亡霊のように現れた。



最初、アイツは俺ではなく

パソコンの画面に興味を示して歩み寄ってきた。








「………黒い球の部屋…?」




今思えば

サイトの背景が黒で

尚且つ文字が赤だったから

ヤツは反応したんだろう。





「お前には関係ねェよ。」



そう言ってタブを閉じる。

もう一つ開いていたタブには死体の写真が写し出されていた。



松坂は口に手を当て
しばらく動かなかった。



何かショックでも受けたかと思えば



聞き取りにくい小さな声で「素敵………」と言った。




正直、驚いた。



同じ趣味の人間が
この狭い校内にいるなど考えもしなかった。





パソコンの冷房が止まって機械音が無くなれば
あとは無音の世界だった。


あの時、松坂も俺も
何も言わず写真を眺めていた。


新しく見つけた物だったから
俺も飽きることはなかった。







先に静寂を破ったのは俺だった。





「…お前、何組の誰だ?」




松坂の頬がディスプレイのライトで青白く光った。

顔の左半分が暗闇に溶けた。





「C組…松坂。松坂みゆよ。……あなたは?」


「A組 西丈一郎。」

「西君、あなたいつも此処にいるの。」

「今日はケータイの充電切れたから仕方なく来ただけ。いつもは屋上にいる。」

「そう…。じゃあ、また会いましょ。面白い物見せてくれてありがとう。」




松坂は俺に背を向けてパソコン室を去った。
残された俺は、まだディスプレイを見つめていた。
もう一枚の死体の写真を見せそびれたのを後悔していたのだった。




ふと気付いて視線をずらすと
先程まで松坂が寄り掛かっていた場所に缶ジュースが置かれていた。

触るとまだ冷たかった。

有り難くそれを飲み干して
冷房が切れて暑くなってきた教室を後にした。


USBに、見せられなかった画像をコピーして。

また会えた時、
必ず見せると決めていた。






それが
夏休みが始まる、2週間前だった。
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