GOTH -Feat.NISHI-

□幻影ヲ追ッテ
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「松坂さん。」







廊下で、擦れ違う男子に声を掛けられた。



足を止めて振り返ると

西君のクラスにいた……ような気がする……人がいた。







「西と……付き合ってンの……?」






一歩一歩詰め寄られ



私は反射的に一歩一歩後ずさった。









「……付き合って、ない。」




「じゃあ…俺と付き合ってくんない…?」










手が壁に当たる。




今度は右に一歩ずつずれた。






彼は尚も私と距離を縮めてくる。
















「俺さ…松坂さんのことずっと見てたんだよね……



松坂さん綺麗だし……」









「……やめて、来ないで。」




「傷付くなァ。」


「やめて、来ないで……!!」









睨みつけると

彼はようやく観念したのか

背を向けて教室へ戻って行った。








深く息を吐いて、自身を落ち着かせる。











リストカット事件の夜以来

彼とは連絡がとれていない。





学校も休んでいると聞いて、数回家にも行ったが
毎回誰もいなかった。



病欠ならば学校に連絡がいくだろうが
A組の担任に尋ねると無断欠席だと言った。




ケータイも繋がらず

目撃情報もない。














あの日、私は西君の家に行ったのだから


おそらく私が最後に彼に会った人間だろう。






そうならば

彼は自ら失踪したか

自宅に誘拐犯でも侵入したか


はたまた
殺害されたか。










ニュースを見ても

連日の原因不明の器物損害事件に関するものばかりで

遺体発見などのニュースは一向に流れない。





もしかしたら
監禁でもされたのかもしれない。
















「………ねぇ松坂さん。」







放課後、帰ろうとした私を呼び止めたのは
隣の席の女子生徒だった。










「松坂さんさ、あの西を探してるの?」



「……まぁ。」






返す言葉に戸惑い、当たり障りのない言葉を口にした。






彼女は心底驚いたように目を見開いた。


周りにいた彼女のグループらしき数名の女子生徒も私に注目する。









「松坂さん、西だけはやめなよ。殺されるよ?」


「西って猫殺して遊んでるって聞いてるでしょ?」


「松坂さん綺麗なんだから、もっといい男子見つかるってー。」







一度に降り懸かる彼女達の言葉に

私はただ、見つめるという反応しか返せない。







彼女達は私のその行動が不満だったのか


溜息と私を残して教室を出て行った。














ケータイを取り出し、ネットのニュース速報を確認する。












また例の件について、専門家の見解が長文で紹介されていた。















そこで私はふと気が付いた。






















彼が消えたのは







リストカット事件解決の日であり
















最近起こった器物損害事件の日とも






一致していた。
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