企画跡地
□Run after the white rabbit.
後ろには帽子をかぶった少女がいました。
「どちら様ですか」
「わたしはアリス……役のスミレです」
どうも気恥ずかしくてアリスと名乗れません。しかし全く気にしていない様子で少女は頷きました。
「私は帽子屋役のオガタです」
そうやって自分自身で名乗った後、オガタは視線を滑らせてテーブルの端を手で示しました。
「そしてあそこでやさぐれているのが芋虫のハセガワです」
「なんで! 俺が! 芋虫!?」
そう喚いた青年は半ば自棄に紫煙をくゆらせながら優雅とはかけ離れた勢いで紅茶をがぶ飲みしていました。
「役決めは消去法だったんで仕方なかったんですって。余りものには福があるって言うじゃないですか」
「3月ウサギも余ってただろ!? どうしてそこで芋虫をチョイスするかな!?」
「3月ウサギと芋虫とを比べて、芋虫は外せないって思っちゃったんだから仕方ないですよ」
「仕方なくない! オガタ、紅茶! おかわり!」
「そんなに飲んだら体壊します」
場末のスナックでやけ酒煽ってる客とママみたいな光景に、もはやどう口を挟んでいいのかわかりません。
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