アナログチャット

□第二章
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1.
ハセガワとの机上のやり取りを始めてしばらく経った、ある日のことだった。
私が学校へ来ると机に落書きがしてあった。

”おはよー”

いつものハセガワの文字ともう1つ。


”死ねば”


ハセガワとは違う筆跡。
乱雑に書き殴ったそれは異様な存在感を私に与えた。
小さな笑い声が耳朶に引っ掛かったが、敢えてそっちを見ないようにした。

鞄をかけて席に着く。
悲しい気持ちになった。

「あれあれぇ。引き籠りがおりこうさんに学校来るようになったねぇ」

横から妙に馴れ馴れしく声をかけてくる集団がいた。
名前も覚えていないクラスメイトが3人。彼女らは嫌な雰囲気の笑みを浮かべていた。

私は静かに現状を飲み込んだ。

『…私に絡むなんてよっぽど暇なんだろうな…』

つまり私は彼女らの暇つぶしの玩具に抜擢されたようだ。この落書きも私への精神的な負担を見込んで、3人の内の誰かが書いたのだろう。迷惑な話だ。

横で煩く喋る彼女達をひたすら無視した。
クラスにいる他の生徒達も私たちを見ないようにしていた。…別に構わない。

ただ1つ気になることがあった。

この落書きをハセガワが見ていないかということだ。

この現状をハセガワに知られるのは嫌だと思った。
でも書いた本人達の前でこの落書きを消すのも、何故か嫌だった。その瞬間負けのような気がしたからだ。

私は可哀想な人間だと思われたくなかった。
少なくともハセガワにだけは―――
 
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