アナログチャット
□第三章
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1.
中学の時は、成績も良くて。
友達も、たくさんいて。
私は親や教師達が誇れるくらいの模範的な生徒だった。
それがいけなかったのかもしれない。
それが大人にとって都合のいい子供であるということに、私は気付けないでいた。
当時の私は目の前のことに手一杯で、高校とか大学とか、ましてやその先のことなんか考える余裕はなかった。
定期的にやってくる試験とか、学校の行事とか、友達との約束だとか、とにかくその時を過ごすことに一生懸命だった。
しかし、選択の時は必ずやってくる。
そう、やって来た。
進路希望調査。
漠然と、高校進学を念頭に置いていた。
自分が社会に出て働くには、まだ幼いことは理解していたから。
友達も皆、高校進学を希望していた。
だからと言って具体的な進路を思い描いていたわけではない。
あくまで漠然と、高校に行くのだろう、と。
結局進路希望調査の紙には、家から一番近い公立の高校の名前を書いた。
しかし、教師達はそれに納得しなかった。
「お前なら、こんなとこよりも上のレベルに行けるんだよ」
2者面談、3者面談でそう言われ続けた。
“こんなとこ”…?
私の友達も何人も受ける高校を“こんなとこ”というの?
母も、先生にうまくのせられて、難易度の高いところの資料を勝手に取り寄せた。
「ほらここなんか、国立大学の合格率がすごいわよ!!」
嬉々として語る母に寒気を覚えた。
お母さん?
ちょっと待って…
「尾形さんは内申点もいいから、あと少し実力をつければ、この高校ならきっと大丈夫ですよ」
先生?
どうして知らない間に話がまとまっているの?
「将来はこの大学に進んで…」
ねえ?
2人だけで、どうして私のこれからを決めているの?
私は…私の話は聴かないの?
聴いて、くれないの?
訊かれても、きっと答えられはしなかっただろうけれども…