アナログチャット

□第五章
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1.
テストが終わった。
あとは冬休みを待つだけだ。

私はひとつ息をついた。
この期末が終わるまで色々あったのだが、私に残っているのは疲労だけではなかった。
今まで溜めていたものを綺麗に清算してすっきりと抜け落ちた中に、達成感というか充足感というか、何か芯のようなものが残っている気がした。

ひどく混乱して泣いたあの日から――




後日、担任は学級会を開いた。
語るも面倒な説教や謝罪があり、頭が痛くなった。
加害者の女子が悪いのは当たり前だ。
だが私にも隙があったのも確かだから甘んじて受けた。
体の中でぐるぐると溢れそうな程に不快感が渦巻いていたが、耐えた。
耐えることができた。
机にはハセガワのメッセージが。

“だいじょーぶ”

大丈夫…大丈夫。
私は大丈夫。
ハセガワが支えてくれてる。
大丈夫だいじょうぶ。
この場所にいればハセガワがいてくれる。


「…大丈夫だったか?」

学級会が行われた日の補習の終わり際、長谷川がぼつりと訊いた。
提出するプリントを手にしたまま見上げる。
補習はその日が最終日で、長谷川を見る機会が減ることを私は素直に淋しい思っていた。

…大丈夫。

今日の緊張が、ふと消えた。
大丈夫、この人は裏切らない。
先生だけど、先生だから…長谷川だから。

「…なんとか、大丈夫でした」

「そう」

ほっと微笑む長谷川から目が離せなかった。

「テストが終わればすぐ冬休みだから、煩わしいこと全部横に置いてゆっくりするといい」
 
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